中澤秀一インタビュー(6/8ページ)

自治労連
続いての話題ですけど、最低賃金は、いま誰でも知っている言葉になってきたという話もしましたが、公務員や正規労働者に、全然関係ないなんてことはないということはもちろんなのですけれど、こういうことを言われた時には、中澤先生だったらどういう言い方をされるかというのをお聞きできればと思います。

中澤
まず現実問題として、最低賃金引き上げでいちばん関係するのは初任給だと思います。最低賃金が公務員や正規職員の初任給にだいぶ迫っていて、自治体によっては最賃が初任給を上回るということが出てきている。
公務員は最低賃金法の適用除外なので、別に最賃を守らなくてもいいのだけれど、最賃を下回っているというのは、やはりちょっと恥ずかしいじゃないですか。だから上げざるを得ないっていうのはあると思います。だから、最賃が上がると自分たちの賃金も変わるということが、だんだん目に見えてきている。繰り返しになりますが、「自分には全く関係のない賃金」から「自分にも関係のある賃金」に様変わりしたという事実がある。
最低賃金が変わることで賃金の底上げにつながって、それが好循環を生み出す。地域の循環を生み出すことになれば、 めぐりめぐって、結局、自分たちの賃金にも影響をもたらすわけです。だから本当に無関係じゃなくて、最賃が変われば社会が変わる、社会が変われば 自分たちの賃金も変わるっていうのが わかりやすくなってきたのではないでしょうか。だから、最低賃金の話に耳を傾けてもらえるようになったというのは、そういう理解が広がってきているからだと思います。

自治労連
それこそ2010年代前半ぐらいに「最賃上げましょう」って宣伝をしていると、経営者の人が「ふざけるな!」と言ってくる人ばかりみたいな感じがあったんですが、いまはそんなこともなくなりました。

中澤
経営者の中にも、最賃が上がることによって購買力が上がれば、結局自分たちにそれが返ってくる、と理解している人も多い。これも先ほどの豆腐屋さんがおっしゃっていたんですけれど、景気が上向くと、すぐ豆腐の売上が上がるそうです。だから景気を良くするために賃金を上げる、最低賃金を上げるというのは全然それを否定せず、むしろ歓迎すべきことです。
もちろん最賃引き上げに強硬に反対している人はいると思います。それで旨味がある人たちはいるので。

自治労連
実際、中澤先生も講演している自民党の最低賃金一元化議連の人たちは、自民党の議員であるのと同時に、地方の声を代弁している人たちでもあるわけじゃないですか。経済界の人たちの声を聞くと、彼らにとっても、いまのまま最低賃金の格差があったり、地方だけが最賃が低いままだと、この地域は成り立たないというのが分かっている人たちということですよね。

中澤
自民党の最賃一元化議連の人たちもそうですけども、いちばん象徴的なのが、徳島県の後藤田知事だと思うんですよ。徳島県は、若者がどんどん流出しちゃうという状況の中で、最低賃金を変えないと徳島の評判はどんどん下がっていく一方だ、というのをなんとかしたいというのがある。後藤田知事はもともと最賃一元化議連にいた人だから、最低賃金の問題は理解されていたと思うのですが、やはりすごく目のつけどころが違うなと思います。今回、徳島のように県知事が政治的に介入して最低賃金を変えさせたということが、地方を中心に今後、さらに広がっていくのかを注目したいところです。

自治労連
実際、この傾向は2023年から加速したと思うのですが、最低賃金は、当然、最高額は東京ですが、2010年ぐらいからの最下位の県との差ってここ2年ぐらいでようやく縮小したんですね。やはり「このままだとこの地域はなくなる」という、そういう危機感なんでしょうか。

中澤
それはもう、その危機感は絶対にあります。だから、それも追い風にして、最低賃金が変わるようにしていかなければいけないと思います。

自治労連
(自治労連のような)公務労働組合だと、以前に比べると「最低賃金? なに言ってるの?」みたいな人は減ったんですが、それでも、最低賃金のことを採りあげると「なぜ、最賃が単組の議案書に書いてあるのか、意味がわからない」という人は、いるにはいます。

中澤
でも、仕組みをしっかりわかってなければ、そうなるのは仕方ないとは思うんです。

自治労連
ただ、傾向として面白いのは、そういうことを言うのは若い人ではないんです。若い人は、どちらかというと最低賃金が自分の賃金、自分たちの給料の水準に近いというのを意識はしている人たちなのかなとは思っているんです。実際、静岡県でも地域手当を含まなければ、これ最賃を下回っているというところがあった。「ついにこんな自治体が出てきたか」と。

中澤
そういうのが報道されるようになってきて、そんなところまで来てるんだって感じですよね。

自治労連
中澤先生も、公務のところは最低賃金の適用除外だから、それを下回っても法には触れないという話ですけど、いや、それは法律では、公務員が最賃を下回るなんてことをそもそも想定していなかったという話ですよね。

中澤
それは、最低賃金が相当低かったということですけれど。

 

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