西日本豪雨災害支援ボランティア参加者による座談会


このページは2018年11月26日におこなった、西日本豪雨災害支援ボランティア参加者による座談会の全文を掲載したものです。

参加者
福島 陽生(島田市労連、技師・建設課)
倉本 航弥(島田市労連、技手・建設課)
杉岡 一宏(島田市労連、事務職・危機管理課)
鈴木 秀紀(島田市労連、事務職・建築住宅課)
梶井 康弘(浜松市職、現業・南清掃事業所)
武内 亨弥(浜松医療センター労組、保育士・あゆみ保育園)
西澤  恒(浜松医療センター労組、保育士・あゆみ保育園)

インタビュアー
伊藤 清実(島田市労連、「しずおかの仲間」編集委員)

助言者
青池 則男(静岡自治労連書記長)

 

静岡自治労連が支援に入った広島県安芸郡坂町小屋浦地区。土石流が民家を襲い、15人以上が亡くなった

2018年はあいつぐ地震や台風、集中的な豪雨や豪雪など、多くの自然災害が各地に深刻な被害をもたらしました。被災自治体では、半年経ったいまも職員が被災者支援と復旧活動に奮闘しています。
いっぽうで、この間国が押しすすめてきた公務員の大幅削減と非正規化、民営化が、自治体の災害対策や被災地の迅速な復旧・復興の妨げになっていることが指摘されています。とりわけ現業職場では、退職不補充や民間委託がすすみ、自治体の現業労働者がこれまで担ってきた災害時における迅速で柔軟な対応が困難になるなど、自然災害に対する自治体の対応力の弱体化が問題となっています。
わたしたち自治体・公務公共労働者として、頻発する自然災害に対してどう向き合うべきでしょうか。また、災害に強い自治体をめざすうえで、取り組むべき課題は何でしょうか。
西日本豪雨災害支援ボランティアに参加された皆さんに、被災地の実態や、活動を通じて見えてきた課題、ボランティアに対する思いなど、それぞれ語ってもらいました。

 

伊藤 さっそくですが、どうしてボランティアに参加しようと思ったか、きっかけから皆さんにお伺いしようと思います。

梶井 静岡にも南海トラフ地震がいつ来るかわからないなか、被災地が他人事だと思えなかったのでボランティアに行きました。

武内 自分は東日本大震災のときに福島の状況をテレビで見て「ひどいな」と思っていて、今回の西日本豪雨でボランティアの話があったときに「こういう仕事をやってみたい」と思ったのがきっかけです。

伊藤 福島のことがショックだったんですね。

武内 そうですね。自分のなかで言葉にできないような衝撃があったので、「自分も人のためにできる仕事をやってみたい」と思いました。

西澤 自分の父親が運送会社で働いているのですが、広島に水とか物資が運べていない状況というのを聞いて、被災地の方が大変な思いをしているのがわかったので、「自分の力なんてたいしたことないかな」と思いながらも、少しでも手伝いになれたらと参加しました

杉岡 僕は福島に4年間、災害派遣職員で行かせていただいたんですけど、被災地でのボランティアの重要性ってあるんですよね。行政の行き届かないところは、ボランティアの手に頼るところがいっぱいあります。僕は危機管理課で働いているんですけど、今回の西日本豪雨では仕事でいの一番に被災地に物資を届けに行きました。でもそのときは被災地の方々の直接力になるようなことができなかったので、「また来ます」と言って、その後個人や組合でボランティアに参加してきました。

伊藤 福島に4年間行っていた経験が大きかったんですね。

杉岡 そうですね。ボランティアって自分のお金になるわけではないけど、福島には東京や広島などからたくさんの人が毎週のようにボランティアに来ていて、僕もそうした方々といっしょに、ほとんど毎週末ボランティアをやっていました。そうした人たちがいるということを知っているので、自分もできるうちはやりたいなと考えています。

福島 自分も7月にほぼ10日間、広島県の呉市に職員派遣で行きました。業務内容はり災証明書の発行で、内勤もしくは現場に出て家屋の調査をしていたんですが、被災地のひどい状況を目の当たりにしながらも、「半壊ですね」とか「これは床上浸水ではありませんね」といった判定しかできないなかで、実際に泥のかき出しとか、直接市民の力になれることがしたいなと思ってボランティアに参加しました。そのときの仕事自体は、それはそれで重要なことなんですけど、被災地の方々にいちばん近い存在なのがボランティアなのかなと感じたので。

倉本 自分はテレビで被災地が報道されているのを見て、「自分にもなにかできることがないか」と考えたときにちょうどボランティアの募集案内があったので、「これはいいきっかけなのかな」と思って参加しました。

鈴木 僕は「人助けをしたい」というのはもちろん前提にあるのですが、表現が適切かどうかわかりませんが、「現地を生で見てみたい」という興味がありました。

伊藤 被災地を実際に見てみて、率直にどう思いましたか?

鈴木 大きな道路とか交通がある程度改善されると、復旧してきたというイメージになって、だんだん報道が少なくなっていくけど、僕らが行った地域はまだまだ家もすごい状態で、人も戻れていない。それなのに静岡に戻ってきたら、もうニュースでもやってなくて、「実態が伝わっていないな」と感じました。

伊藤 確かに割とすぐに報道されなくなった印象がありますね。被災地を実際に見ていない人たちにとっては、報道がすべてになってしまって、テレビなどで報道されなくなると「もう大丈夫なんだ」というイメージを持ってしまうところがあるかもしれません。

武内 テレビで見るひどさと、現地に行って実際に見るひどさでは、やっぱり比べ物にならないと思いました。現地には現地にしかない雰囲気だとか、空気があって、そこに行っただけで「大変なんだ」というのがすごく伝わりました。

伊藤 テレビの映像だけでは伝わらないものがあったということですね。

福島 現地は埃がすごかったですね。

杉岡 テレビのいいところでもあるし、悪いところなんですよね。空気が全然伝わらない。

 

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家屋に入り込んだ泥を、なんどもなんども運び出した

 

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