中澤秀一インタビュー(2/8ページ)

自治労連
2024年の人事院勧告での資料の標準生計費って、やはりかなり変で、この物価高騰の中で、昨年よりも生計費がマイナスになっていたりします。そういう標準生計費に対して、私たちが調査し、科学的に示す最低生計費。この最低生計費というのはどういうものかというときに、中澤先生はどう説明されますか。

中澤
マーケットバスケット方式という、全物量積み上げ方式というところで、きちんと一つひとつ科学的に積み上げて、かつ、それがいわゆるガラス張りになっていて、どのように試算したのかを見える化しているというものなので、納得して見てもらえるというか、評価してもらえるのではないかと思います。ご存じの通り、人事院は標準生計費をどうやって出しているのかをきちんと明らかにしていない。ブラックボックスに覆われている。結局、統計の並み数を算定しているんだということを言っているけれども、実際、統計のどこでどれくらいのデータから算出しているのかは一切表に出していない。全く見える化されていないわけです。
だから、標準生計費はやっぱりおかしいとしか言いようがなくて。聞いたところの話だと、地方の最低賃金審議会でも議論の材料に標準生計費を使うのがおかしいんじゃないかと、やっぱり分かっている人はだんだんそれを言い始めてきている。

中澤
たぶん標準生計費がなんでこんなに低いのかというのは、やっぱり賃金を低水準に抑えるための一つの装置というか。標準生計費がいくらだから、例えば初任給をいくらにするって決めているみたいに連動しているわけではないんだけれども、やはりこれがあることによって低く抑えられる。標準生計費がこんなもんだから、まあ、これぐらいの賃金でもいいんじゃないかっていうふうに、賃金を低く抑える装置になっている。
そこにラインがあるから、そこを目安にっていう形になる っていうことで、これは「103万円の壁」もそうなんですけど、やっぱりそういう装置をいくつか作ることで日本というのは労働者の賃金を低く抑えてきた。そういう装置の中の一つだというのを、あらためて感じます。
だから、最低生計費はきちんと科学的に、こういうふうに積み上げて出しているものなので説得力があるというか、やはりエビデンスになっているので、 多分、最賃1500円運動の要求の根拠になれたっていうのは、やっぱりそうやって科学的に一つひとつ積み上げて出したもので、信頼がおけるというところがあったからです。
多分、標準生計費におそらく誰もそんなに信頼を置いてないと思うんですよ。でも示されているものだから、これをラインにしましょうというふうに使える。結局、そういうものなのかな、と思ってしまいますよね。だから、最低生計費とは重みが全然違いますよね。

自治労連
標準生計費は、いくらなんでも毎年、何人世帯がいくらかというのが、ここまでばらつきがあるというのは、ちょっと異常としか言いようがない。要するに自分たちが持っていきたいという生計費に導くために、標準生計費というのは使われている。実際、標準生計費というのは、いろいろなところで使われているじゃないですか。社会保障関係でも、例えば最低賃金もそうですし、それこそ103万円の壁のことを言いましたけど、いろんな社会保障とかでも、結局、この数字が諸悪の根源なんだよ、という。

中澤
そういう見方、正しいと思いますよ。

自治労連
というのは自治労連で、この生計費の運動のことを言うときに、標準生計費っていうのを使っているのはマズいんだけど、でもこれはダメな数字なんだよっていうのを、どうやって組合員に伝えていけばいいのかな、と考えていたんです。

中澤
だから、自治労連のみなさんも、これおかしいってずっと言っていたんだけど、どうおかしいのかがなかなか言えなかった。それがやっぱり、最低生計費が出てきたことによって、その比較において、科学的にやってみたらこの数字だった。例えばいまで言ったら月額25万円とか26万円という数字になってるわけです。でも、標準生計費はもう全然そこに届かない。だから、やっぱりおかしかったんだ、というのが、あらためて見えてくる。そういう意味で最低生計費は、生計費とは何なのかという問いにしっかりと答えを出しているのに対して、標準生計費は曖昧というか、誤解を与えるようなものであるということです。

自治労連
なるほど、ありがとうございます。

 

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生計費は確実に上がっている

 

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