中澤秀一インタビュー(5/8ページ)

自治労連
最初に静岡で最低生計費試算調査を始めたのが15年ぐらい前ですよね。

中澤
それを僕も言うんですが、その頃、最低賃金に関心を持っている人って労働組合関係者であってもほとんどいなかったんですよね。

自治労連
「最低賃金が上がったからなんなんだよ」くらいの…。

静岡県最低生計費試算運動合同チーム(静岡県評・静岡自治労連・静岡県労働研究所)が2010年に実施した最低生計費試算調査結果を紹介したブックレット「これだけは必要だ!静岡県の最低生計費」(中澤秀一(編著)/本の泉社(2012年2月)/64ページ)

中澤
そこは本当に隔世の感があるというか、最低賃金が一般的になったというか。みんな知っている話題になったなという実感がある。最低賃金がぐんぐん上がってきたことによって、自分にも関係のある賃金になってきたということなので、時流というか追い風に乗って、最低賃金をもっと変えていかないと。最低賃金が変わることによって、社会が良い方向に変わっていけば、結局また自分に返ってくるわけです。
労働運動って、やはり個別の交渉だけじゃないんですよ。社会に対する交渉も同じように大事で、そこは車の両輪なんだけれども、既存の労働組合は、やはり個別の交渉に注力してきたので。

自治労連
企業内のたたかいになっちゃう。

中澤
別にそれを否定するわけじゃないですよ。それは大事なんですけど、社会的な賃金闘争というか、社会に対する運動も一緒にやらないといけない。社会がよくならないと、結局、自分たちの生活もよくならないので。特に公務員賃金なんかそうだと思うんですよ。社会全体の賃金水準が上がってくると、公務員賃金も上げられるっていうふうになるんですけど。

自治労連
人事院勧告とは意味が違いますよね。人勧は民間賃金が上がったからそれに合わせてるって言うんだけど、そうじゃないですよね。

中澤
そこが大事なところですよね。

自治労連
そういう話が聞けるというのは素晴らしい。
全国統一行動なんかで、役所とか省庁とかに行って、そこで門前宣伝とかやるんですけど、ずいぶん前に、一部の組合員から「そんなことやっても俺らの給料上がらないよ」みたいに言われたんです。その時はまだ「いや、そうじゃないよ」って言えなかったですけど。やはり制度なり、社会全体の水準が変わらないと、足元の賃金も変わらないという。特に自治体なんていうのは、横並びになろうとするところがあるので、周りが上がらないと、自分たちも上げないという傾向が本当に強いので。
中澤先生が「社会に対する交渉」という言い方をしましたけど、その表現いいなと思いました。労働組合は運動とか取り組みとかいう言い方をしているんですけど、社会に対しての運動というのを、社会全体で引き上げていくというたたかいというか交渉というのは。やはり必要ですよね。それが車の両輪というのもその通りだと思います。

中澤
まさにその通りです。そういうテクニックは労働組合が持っていると思うし、法的にも保障されているわけなので、だからもっとやっていただきたいし、やるべきだと思うんです。それが自分たちのところに返ってくるわけなので、本来ならそういう視点とか観点を持っていなきゃいけないはずですけど、労働組合も目の前の自分たちの課題が先になっちゃうと、結局、非正規の問題とか、公務員で言えば会計年度任用職員という問題が後になってしまう。
そこを放置して問題が大きくなると、結局、そこに引きずられて、自分たちも落ちていくわけじゃないですか。それは分かっているはずなのに、そこにふみ切れないというのは、やはりちょっと悲しいと思います。

自治労連
自治体だと給料条例主義だから、そこで決まったら、労働組合に加入していてもしていなくても賃金は変わらない。すると「組合費を払うだけ無駄じゃない?」みたいな人が出てくるわけですよ。いや、そうじゃないですよね。でもそこに対してのキーワードとして「社会的な交渉」というのは、いいなと思いました。

 

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