中澤秀一 × 菊池仁 特別対談


このページは2019年5月21日におこなった、中澤秀一准教授と菊池仁委員長の対談の全文を掲載したものです。

参加者
中澤 秀一(静岡県立大学短期大学部准教授)
菊池 仁(静岡自治労連執行委員長)

 

7月4日公示、21日投開票の日程で参議院議員通常選挙がおこなわれます。参院選を前に、わたしたちの暮らしや働き方には課題が山積しています。
社会政策・社会保障を専門とし、全国の最低生計費試算運動で監修を務める、静岡県立大学の中澤秀一准教授に選挙のポイントを聞きました。

中澤 秀一(なかざわ しゅういち)

1967年生まれ。静岡大学人文学部経済学科卒業、中央大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。静岡県立大学短期大学部社会福祉学科准教授。専門は社会政策、社会保障。
主な著書に「最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし:『雇用崩壊』を乗り超える」(大月書店、2018年)、「これだけは必要だ!静岡県の最低生計費」(本の泉社、2012年)。
2010年、2015年の静岡県をはじめ、全国の最低生計費試算調査で監修を務める。2019年4月には自民党最低賃金一元化推進議員連盟のヒアリングに、最低生計費研究の第一人者として招かれ、全国一律最賃制の実現と抜本的な引き上げの必要性をうったえた。

 

菊池 これから7月の参議院選挙を迎えるわけですが、静岡市では4月に静岡市長選挙があり、静岡自治労連前執行委員長の林かつしさんが立候補されました。
中澤 僕も労働政策について少しアドバイスをさせてもらいました。結果は残念でしたが、一定反響もありましたし、「働く人を大切にする街」という公約は市民に響いたんじゃないかと思います。それは静岡市に限った話ではなく、国政においても、日本を「働く人を大切にする国」にするというのが、労働組合としても主張していけるところだと思います。
菊池 そこのところを掘り下げてお話をうかがえればと思います。わたしたちが生きていくためには、まずはある程度の生活を送ることができる賃金というものが必要になってきます。
中澤 それが基本ですね。
菊池 ただ、それだけの賃金を得るためには何時間働いてもいいんだということには、当然なりません。わたしたち労働組合は「8時間働けば普通に暮らせる社会」を求めて運動をすすめています。そのうえで、「最低賃金」が重要になってくるんじゃないかと思います。
中澤 最低賃金がこれだけ注目されてきたのは、じつはここ最近のことなんです。2010年に最低生計費試算調査をおこなったときも一定注目はされていたと思うのですが、2000年代はじめごろの最低賃金は、1円上がったり、逆に下がったりと、ほとんど変動がなくて、多くの労働者にとって関係ないものでした。それがここ何年かは毎年20数円ずつ、ぐんぐん最低賃金が上がっていますよね。最低賃金に関係する人が、労働者全体の割合のなかで増えてきていて、みんなに関係がある賃金になってきたことで、注目せざるを得ない状況になってきた。安倍首相も今年度最低賃金を5%上げろと言ってるみたいだから、東京なんかでは最低賃金が1000円超えるような段階にきています。こうして最低賃金が注目を集めていくなかで、色々制度のおかしいところが見えてきている状況なんですね。静岡自治労連の皆さんにもご協力いただき、静岡県評でも2010年と2015年に最低生計費調査をおこないましたが、全国で取り組んだ最低生計費調査の結果、全国どこでも22、3万円くらい必要だという数字が出ています。やっぱり普通に暮らすためにはそれくらいの金額が必要で、いまの最低賃金ではそこに全然追いついていません。だから8時間働けば普通に暮らせる社会を実現するためには、まず最初の土台として最低賃金で8時間働いて得られる賃金である程度の生活ができる社会をつくることが大事になってきます。それを強く言えるようになったのは、最低賃金に関係する人が増えてきたなかですごく説得力がある状況になってきたからだと思います。
菊池 そうですね。
中澤 もう少し詳しくいえば、大きく分けて問題点が2つあります。1つは最低賃金が低すぎることです。いまの静岡県の858円では低すぎて、8時間働いて普通に暮らすためには1500円くらい必要です。2つめは地域間格差の問題です。静岡県でいえば隣の神奈川県と最低賃金が125円違うなかで、どんどん東京や神奈川に若者を中心に人口が流出してしまっています。こうした人口社会減の問題は、静岡だけでなく九州や東北でも同じ問題を抱えていて、若者が地元を出ていって帰ってこないもとで、どんどん地域から活力が失われていく問題が日本中で起きていて、政策の課題となり、自民党も今年の2月に最低賃金一元化の議員連盟を発足させました。最低賃金の一元化は、我々がずっと言ってきたことですけど、今回自民党が言い出したことについて、菊池さんはどのように感想を持たれますか?
菊池 世界との立ち位置という意味では、確かに一部に集中していたほうが効率はいいんでしょうけど、やっぱり日本全体の活力を考えるうえで、一部に富が集中しているだけではいけない。日本全体に活力が――一部ではなく、広くあることで、国としての力が生まれてくるんじゃないかなと思います。やはり地域ごとに賃金に違いがあるのはよくないなというのがあります。やはりどこに住んでいても、同じ日本に住んで生活しているわけですから、賃金は同じであるべきじゃないかなと思います。

4月11日、自民党最低賃金一元化推進議員連盟のヒアリングにて発言する中澤准教授

中澤 「8時間働けば普通に暮らせる社会」このスローガンも他のところでは、「誰でもどこでも」が頭についてですね、「誰でもどこでも8時間働けば普通に暮らせる社会」というのがスローガンになっているんですけど、いま菊池さんがおっしゃったように、東京だけじゃなくて地方でも8時間働けば普通に暮らせるというのが、ひとつの政策の課題というかテーマになってきたからこそ、自民党もそれを無視できない状況になってきて、最低賃金一元化の議員連盟を発足させたと思うんです。僕も4月11日に議連に呼ばれて、生計費調査の監修をやっている者としてちょっと話を聞かせてくれということで、話をしてきたんですけど、「生計費調査ってすごい説得力があるね」と自民党の議員にもすごく評価をしてもらったんですね。やっぱり「調査結果」という、根拠のある数字ってすごく大事なんです。だから最低生計費試算調査に自治労連が取り組んできたということは、やっぱり大事なことだと思うので、ひきつづきこうしたことを労働組合に取り組んでもらいたいというのがあります。

 

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