菊池 参院選の大きな課題として、憲法の問題があります。
中澤 この対談のテーマでもある「暮らしも経済も平和も支えているのは憲法」というところで、やっぱり憲法を大事にするということが、わたしたち国民の暮らしも経済も平和も守っているんだということですよね。逆にいまある問題の根本には、いまの政治のなかで、憲法がないがしろにされていることがあると思います。だからこそ安倍政権は、いちばんの本丸として憲法改悪をねらっているんだと思います。
菊池 安倍政権のいちばんの目的は、憲法9条に自衛隊を位置づけることだと思います。
中澤 それをやるためにはもうなりふり構わず、国民の支持が得られることだったらなんでもやるでしょうね。だから、幼保無償化だとか給付型奨学金をつくるだとか、最低賃金の一元化だとか、そうしたことをやってくると思います。だからそこに惑わされない、真の目的がどこにあるのかということをきちんと言っていかなければいけないと思います。
菊池 いまの憲法は、以前の政治の失敗に立って、それを正す意味でできあがった憲法だというように思います。たとえば9条ができたのは、日本が海外に資源を求めて侵略していった歴史があり、その反省に立って、「戦力は持たない」「戦争はしない」ということを宣言した内容なんですよね。それなのに安倍政権はこの9条に自衛隊を明記しようとしている。確かにいまの自衛隊は災害救助などで非常に活躍しているというのはひとつの事実としてあるわけですが、先日も屋久島で救助活動をがんばっておられたわけですし、そのことについてはわたしたちとしても否定はできない。ただ、自衛隊という組織において、そういう災害救助という任務は、自衛隊法のなかには載っていないんですよね。
中澤 そうした位置づけはされていない。だからもし9条が改憲されて、日本が戦争できるような国になったときには、いまのような災害救助活動はできなくなると思うんです。まず優先させなくてはいけないのが、海外への派遣・派兵になってくるので、いま国内で災害が起こっているけど、海外派兵しなければいけないから、そっちには人員を割いていられないというようになると思います。いま国民の間で、自衛隊は災害時にすごく活躍してくれていると認識されているところが、そうしたことができなくなるわけですよね。だから9条に自衛隊を明記しても何も変わらないどころか、国民にとって何もいいことがないんです。
菊池 自衛隊に関していえば、今回9条への明記がぽっと出てきたわけじゃなくて、ここ何年かの流れのなかで、それこそ安保法制や集団的自衛権行使容認によって、本当にアメリカなどの同盟国といっしょになって軍事行動ができるという、そういう組織になってしまったなかで、その自衛隊を憲法上に明記するということは、まぎれもなく日本が戦争できることにお墨付きを与えることになるんですよね。
中澤 そうなったときには、わたしたちの基本的人権もどんどん制約されてしまいます。そこにもっと思いを至らせなければいけないんだけど、TwitterなどのSNSを見ていると、「どうして労働組合が平和運動をやるんだ」とか、そういった批判をよく見かけます。どうして労働組合が、日本が戦争する国にならないように平和運動に取り組むのかということも、丁寧に説明していくことが大事ですね。
菊池 自衛隊がどうのというよりも、基本的人権の制約というところがより大きな問題となる。9条を変えるということは、そういうことなんですよね。
中澤 改憲で戦争できる国になっちゃったら、わたしたちの暮らし方、働き方も変わっちゃうんだよということをしっかりと説明して、だから労働組合が平和運動に取り組んでいるんだよということをきちんと言わないと、そこがわからない人もいると思うので、もっと丁寧に説明していかなければいけないんじゃないかと思いますね。
菊池 改憲の問題は、自衛隊の問題というより、わたしたちの人権が制約されてしまうことこそが問題なんですよね。
中澤 そこですね。そういうふうに言えば、すごく大切なことだってわかると思うんですよ。
菊池 そこを全面に出してうったえていかないと、自衛隊が戦争に行くかもしれないということだけでは、なし崩しに改憲させられてしまう危険性があるのかなと思います。
中澤 戦争する国づくりというのは、完全にアメリカの意向のなかでの話なので、いまのアメリカべったりの状態で本当にいいのかということも、同時に言っていく必要があると思いますし、それについてもきちんと説明すれば、共感を持ってもらえると思うんですよね。
菊池 やっぱり外交としても、日本は戦争しない、軍隊を持たないという9条を持っている、だから皆さんも戦争はやめましょうという、そういう外交をしていくのがいちばんですよね。
中澤 そうですね。本当の政治というのは、戦争しないで話し合いで解決していくのが政治のはずなのに、「戦争しか解決手段がない」なんて言ったら、すべてを放り出してしまうことになりますものね。
菊池 そんなものは外交ではないですね。
中澤 本当にそうだと思います。
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「恐怖」に対して対抗できるのは「怒り」