中澤秀一 × 菊池仁 特別対談(5/8ページ)

菊池 これまでも消費税率が上がるたびに景気が冷え込んできた過程がありますから、今回も増税されるとすれば確実に景気悪化があるんじゃないかと思います。
中澤 そうなれば税収も減るわけですから、悪循環に陥りますよね。逆に消費税増税を凍結するなり、減税することで景気が良くなれば、税収もまたアップしていくわけですから、そういうふうに考え方をシフトしていくことができると思うんですよね。
菊池 そうですよね。なぜそういう政策がとれないのかが、まったく理解できないです。
中澤 たとえば年金の問題にしても、世代間で支え合うみたいに、要するに国民のなかで若い人たちが高齢者を支える制度だというように思い込まされているんですけど、そうじゃないんです。そもそも社会保障がなぜできたかというと、歴史的に見れば、労働者・国民の自助だけでは対応できない様々な問題が出てくるなかで、企業なり国なりが支える制度――これを「社会的扶養」と言うんですけど――そうしたものがないと問題が解決できないというところで、「社会保障」という制度が主に戦後になって登場するんですね。だから社会保障の成り立ちを考えれば、自助とか共助じゃなくて、そもそも公助――国とか企業の負担がないと成り立たないところからスタートしているんです。いまはそれに逆行して、いかに国の負担なり企業の負担を減らすかということをやっていますけど、歴史的に見たらものすごく逆行したことなんです。社会的扶養の部分がすごく大事であることはいまも変わらなくて、むしろそこの部分を強化していくように政策をシフトしていかなければいけないはずなんです。だから社会保障の成り立ちを考えれば、社会保障費の増加を消費税増税でまかなうというのは、まさに逆行したものと言えると思います。
菊池 わたしたちの暮らしを考えるうえで、消費税増税は止めていかなければいけないなと思いますね。
中澤 本当にそうだと思います。ストップ消費税増税ですね。
菊池 また、逆に「増税させなければ、子どもの福祉は止めちゃうぞ」とか、そういう脅しもあるんですよね。「消費税増税がなければ、社会保障を引き下げるしかなくなるぞ」ということを言ってくるところも問題だと思います。
中澤 そうしたなかで、ほかの諸外国に目を向ければ、そういった教育なり、保育なり、医療なりといったところは、国の責任でやっているんだぞと、それを消費税じゃなくて、財源は別のところに求めてやっているんだということをもっと言っていく必要がありますね。消費税増税しなければ社会保障を削るぞと、財源を消費税に求めるんじゃなくて、大企業の内部留保なり、儲け分なり、ほかのところに求めていけばいいんだって。フランスなんかは雇用主の社会保険負担が6割で、労働者より多くを雇用主に負担させているんですよね。企業の社会的責任ってすごく大きいんです。まさにこの教育だとか幼保のところなんかは、企業にある程度の負担を求めるというように制度設計をすればやれるので、どうして消費税に財源を求めるのかというと、国民がそれしかないと思わされているんですね。だから、そこはきちんと「そうじゃない」ということを、まずは労働組合がしっかりと話をすることが大事です。でも、もしかすると労働組合の人もそういうふうに思い込まされているのかもしれない。勉強されている方はわかっていると思いますが、一般の組合員の人たちのなかには、そうじゃない人もいるかもしれない。だから、そういったことをきちんと学習して、広げていくことが大事なんじゃないでしょうか。
菊池 世の中何が問題で、わたしたちは何をしていかなければいけないのか、もっとしっかり学習していかないといけないですね。
中澤 そうですね。
菊池 わたしたちとしても、前にすすんでいかなければいけないということは、すごく強く感じます。
中澤 学習がやっぱり必要ですよね。

 

 

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