特別鼎談「災害に強い自治体をつくるために」(7/9ページ)

村山 とにかく住民から問い合わせの電話やメールがバンバンきますね。「今どうなっているんですか」とか「避難所はどこですか」というのが当然危機対策部門にはきますし、私たちのところは農地だったので、農業者の方から「いつになったらうちの田んぼは水が掃けるんだ」と言われたりします。

杉岡 市役所を便利屋のように思われている住民の方もいますね。たとえば「避難するので要支援の人を動かしたいんだけど、役所の人が車できて運んでくれ」って、いやいや無理です。そうしたことまで市役所で対応していたら職員がまったくいなくなってしまう。そういう方が避難できるように事前に名簿をつくって、この方の避難のためにこの方が手助けに行くという体制をつくってあったのですが……実際に災害が起こると駄目ですね。なんでもない穏やかなときなら「じゃあ自分が行くよ」って言ってくれる人も、いざ大雨、強風のときには自分のことだけで手一杯になってしまう。民間の介護タクシーなども、そうしたときは「うちの社員の安全確保のため車は出せません」となりますし。
こうしたなかで、何かあったときに困っても「役所ならなんとかしてくれる」という考えの方がまだ多いのかなという気がしますね。むしろ「自分たちでなんとかするには」ということをあらかじめ考えておいていただく必要があるのかなと思います。
心ない問い合わせの対応だけでも時間を割くし、みんな自分だけでは判断ができないので、「こういうことを言っている人がいるんですけど、どうしたらいいでしょうか」とみんなで相談することになる。こうしたことも非常時において足かせになる時間なのかなというようにも思います。

菊池 「何かあったら役所に相談するように」ということは、それはそれで非常にありがたいことなんですけど、非常時においてはそれも必要かもしれませんね。

杉岡 節度ある問い合わせがほしいですね。

村山 今回、私は直接対応しなかったのですが、避難所の対応をした職員の話でこういうものがありました。基本、避難所で用意できるものは限られるので、食べ物だとか、必要なものは自分たちで持ち込んでいください、自分たちで持ち込んだほうが助かりますとアナウンスしていたらしいのですが、それを聞いてちゃんと準備して持ってきた人もいれば、何も持ってこなくて、「何も用意していないのか」と文句を言う人、食べ物を持ち込んだ人はいいものを食べているのに、「自分には何も食べるものがない。いったいどうなっているんだ」と言う人もいたそうで、やはり市民のなかでも温度差があったそうです。
また、伊東市では台風15号の被害が大きくて、19号は比較的被害が少なかったのですが、19号のときは15号のときの教訓があったので、市の方でも早めに避難のアナウンスをしたら、かえって避難所に人が多く来すぎてしまって困ったというのがありました。「15号のときみたいな状況になったら困るから」ということで、多くの市民が早めに避難したのですが、そうすることで今度は会場のキャパシティを超えてしまう避難所が出てきてしまい、そうすると先ほど杉岡さんの話にもありましたが、まさに雨風が強いときに別の場所に移ってほしいということになる。その結果、「どうして私が避難所を移らなければいけないのか」とか、「私のほうが先に避難所に来ていたのよ。あとから来たあっちの人を移せばいいじゃない」とか、市民同士のいざこざが生じてしまうということがあったそうです。
当然こうしたことはなかなか想定できないので、対応した職員は「移動してくれ」と言い出すのもつらいし、言って文句を言われるのもつらく、どんどん精神的にまいったと聞きました。こうしたことが起きたときにどう対応すればいいかということも課題ですね。

杉岡 避難所の職員にそこまでの責任を負わせていいのかどうかという問題もありますね。

村山 こうした問題が起きたときに、たまたまそこにいた職員――伊東市の場合、たとえば避難所が学校の体育館だと、教育部局の人間が鍵の開閉などを対応することがあるのですが、その職員がたまたま不満をもった市民にものすごく文句を言われ、「どうして私がそんなことを言われるのか」ということが実際問題として起きますよね。

杉岡 市民の方もこうしたときに文句を言うところがないので、どうしても役所にそれが来てしまうんですよね。なので、職員もそれを聞く覚悟でいないと。ただし、真に受けすぎると職員のほうがへこんでしまうので、職員のそうしたケアも必要になってくるかもしれませんね。

村山 そうですね。

菊池 市民からのそうしたクレームは、日常的に受けていますけどね。

杉岡 そうですね。

村山 でもそれが災害対応で心底疲れたなかでのクレームだったりすると、「どうしてそこまで言われなきゃならないのか」って思っちゃうこともあるんですよね。

杉岡 「こんなにみんなが大変なときに、どうして自分のことばかりを私たちに言うのか」って思っちゃうんですよね。まあ、やっぱりみんな自分が大切ですから、それはわかるんですけど。ただ、やっぱり時と場合も考慮していただけたらとは思います。

 

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