菊池 こうした災害対応は、一時のことだけじゃなくて、本当に長いスパンで考えていかなければいけないことだと思います。ひとりの職員だけに負担がかかることなく、みんなで交代しながらうまくやっていく体制がきちんと取れないといけない。当然、本来業務があるなかで、それをやりながらということになってきますよね。そういうなかで、今の職員の体制が、はたして妥当なのかということも、日頃から考えていかなければいけないことだと思います。
ただ、そういうなかでも「公務員を減らせ」という声が大きく出ていて、今、国のほうでは「自治体戦略2040構想」というものがあります。これは2008年をピークに日本の人口が減少し、若い人がいなくなって、急速に少子高齢化がすすむもとで、2040年を見据えた自治体のあり方をどうしていくのかを研究している国の機関です。そこで今、議論されていることは、私たち組合として住民サービスを考えていくうえで、非常に大きな問題があると思います。
ひとつには自治体の職員を現在の半分にまで減らしていこうというもの。そのためにどうするのかといえば、AIを利用して人間の職員の代わりに業務をやってもらうということが考えられています。しかし、これはあくまでも通常業務のことしか考えられていないですよね。
実際問題、全国各地で災害が頻発しているなか、今の人員体制では対応しきれないくらい大変だと言われているにもかかわらず、AIを導入して職員をもっと減らしていこうということは、これは本当に住民にとっていいことなのかどうかということを、私たちは考えていかなければいけないと思います。
私たちは「地域に住んでいる住民のために仕事をしよう」と、市役所の職員になりました。市役所に新しく入ってくる職員も、それぞれにそういう思いを持って入ってきてくれていると思います。
そうしたなかで、災害に対応できない――それこそ行政が担うべき仕事、今行っている仕事が後々に継承できない、伝えていくことができないような職員体制、そういう自治体ではたしていいのかということを、本当に考えていかなければいけない時期にきているのだと思います。特に、災害に強い自治体をつくるためにはどうしたらいいのかというところは重要な課題ですね。
村山 市役所に入ってくる職員も、以前のように倍率がすごく高くて、採用試験を受けてもなかなか受からないというのではなく、そもそも応募してくる人自体が減っているなかで、なかなか職員も増えていかず、また、自分の仕事を新しい職員に伝えていくことができるそんなゆとりもない今の状況は、やっぱり心配になるところです。
自分が職場に入ったころは、先輩からいろいろ教わりながら、仕事もいっしょについてもらって教えてもらうゆとりがありましたけど、今はある程度自分で考えてもらって、その人任せにしてしまっているところが正直なところ私にもあります。教わる側にしてみれば、「もっとちゃんと教えてくれてもいいんじゃないか」と思うところもあるでしょうし、やっぱり書類をただ読んでわかることって限られていますし、いっしょに仕事をやってみせて、教えてあげて、はじめてわかることも当然あると思います。
この度の災害対応もそうですし、市民のために仕事をするということは、ある程度人員のゆとりがないと突発的なケースに対応できず、結果的に住民から信頼される仕事ができなくなってしまうんじゃないかということを感じます。
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