特別鼎談「災害に強い自治体をつくるために」(2/9ページ)

 

菊池 自治体の担当課の職員についても、本当に限られた人員のなかで対応しなければならないので、緊急時にあちらの対応をしなければならない、こちらの対応もしなければならないとなったときに、とっさの判断で優先度を考えて対応にあたるというのもなかなか難しいと思いますね。

杉岡 そうですね。

村山 現実問題として、やはり生活に関わるもの、大きい被害が出たところからになってしまうと思います。たとえば伊東市の場合、池地区というひとつの地区に集中して農業施設に大きな被害が出たものですから、農業担当部署としてそこに集中的に人員も労力も割くかたちになりました。当然、ほかにも被害が出ている地域はあり、倒木なり、土砂崩れによる通行止めなどいろいろな被害があったのですが、どうしても集中して対応できるところと、人員を割くのが後回しになってしまうところが発生してしまいます。混乱のなかでいったん落ち着いて、優先順位を整理して対応するというのは、なかなか現場サイドで行うのは難しいということを、体験して感じました。

菊池 静岡県は昔から巨大地震がくるということでいろいろ準備をしてきましたが、これまで実際の災害はそんなにありませんでした。

杉岡 そうですね。それこそ静岡県って――先ほどの伊東市もそうですが、地震に対しての備えはすごくきちんとしているんですよ。家屋倒壊をゼロにするための施策とか、地震が起きたときの避難訓練とか、すごくやっているんです。島田市でもそうしたことを行っています。
でも、地震と水害では必要な対応が全然違っていて、同じ避難するにしても、地震の場合は災害が起きてから避難するじゃないですか。でも水害は災害が起こる前に、事前に事前にという行動がすごく大切なんです。
今回、島田市は午前6時に避難勧告を全域で出して、避難所はその前日から準備して自主避難のために開けていました。雨風のピークである夕方6時くらいには家の周りの水位がどんどん上がって、水路が詰まって、かなり冠水してしまった。それを受けてようやく避難する人が大勢避難所にやってきました。本来ならそんな危険なときは家の外に出ないでほしいのですが、それはやっぱり伝わらないんですよね。「水が来たから逃げてきた」って言うんですけど、外はものすごい強風が吹いていて、近所の川はもう氾濫ギリギリの水位で、足を滑らせて川に落ちたら確実に死んでしまう。そんなときに外に出たらだめだよ、と。いくら日ごろ防災訓練をしていて、防災意識が高い静岡といっても、災害の種類が変わるだけで全然変わってきてしまうんです。
河川の河床を深くして容量を増やすとか、ハード面の対応はお金も時間もかかりすぎる。だからそういった教育を含めて、ソフト面の対応をどんどんやっていかないといけないと思います。それは住民もそうですし、職員にも言えることなので、「意識改革」ってすごく大切なことだと思っています。

菊池 避難勧告とか避難指示にしても、どのタイミングで出すかというも難しいですね。

杉岡 職員のなかには避難所に行く担当もいるのですが――避難勧告をいつ出すかということも、僕ら(危機管理課)は「何時に出そうか」と検討のうえ、「じゃあ何時に出そう」となるけど、それを受ける側の職員は何の情報もなく、仕事中にいきなり「今日の3時に避難勧告を出すから準備に行ってくれ」と言われて、でも自分の仕事も抱えているしとなるんですね。また、ちょうど別の現場に行っていたり、その日休暇を取っていたりして、担当が不在の場合もあります。しかし、その欠員が生じたところに代わりに誰をあてるかまでは想定されていない――あくまで基本的な体制しか構築していないんですよね。それ以上のことを構築しようとすると、職員から「負担が多すぎる」「納得できない」という声が上がってしまう。
しかし実際に災害が起こるとやっぱり人員は足りなくて、職員の平等さも欠けてきてしまうんです。避難所の近くに住む職員が避難所を担当することになっているんですけど、じゃあ市外に住んでいる職員は充て職がないけど何もしなくていいのかとか、そうした不満も出てきてしまう。そうしたときに「申し訳ないけど、泣いてください」と言うしかない状況です。それも踏まえて、職員がいないなかでも、無理な体制や負担の不平等さがないようにしていかないといけないと思います。

菊池 避難所については、すぐに体制が取りやすいということで、やはり避難所に近いところに住んでいる職員があてられますよね。

杉岡 地元に住んでいる職員が行くので、避難所に避難してくる地元の方も、誰か知らない人がいるよりも安心感があるというか、何かあれば言いやすいですし、そういう理由もあるかもしれませんね。

村山 安心感もあるし、知っている人同士ならコミュニケーションも取りやすいですし、そういう意味では地元の職員がいることのメリットはあるのですが、先ほど杉岡さんが言われた問題はまさに伊東市でも起きています。防災での組織支部員など、その地区に詰める人はだいたい同じ人がずっと担っているのですが、産業課の職員でもそうした人がいて、災害対応の前線に出なければならない課のなかに、そういった地域の防災の役割を併任されている方がいると、「じゃあ、どちらを優先すればいいの」ということになります。自分の課のこともやりたいけれど、支部の担当でもあるしで、現場も避難所も対応しなければならないということは、前々から懸念されていた部分でした。
かといって一個人の意思で割り当てを拒否するわけにもいかないし、防災の担当課としても「この人にやってもらいたい」という理由があって指名されているのでそれも蔑ろにできない。でも課のことも今まさに対応しなければならない。そういったジレンマがありましたね。

杉岡 人が足りないというのは、確かにそうですね。

 

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