望月衣塑子 × 前川喜平 特別対談(4/7ページ)

前川 あと、改憲4項目といわれるうちの4項目は教育に関するものなんですが、

青池 そうですね。

前川 憲法26条に第3項を加えるというやつですね。あれは、ほとんどの部分は意味がないことが書いてあるんですけど、一カ所だけ、「教育が国の未来を切り拓くうえで重要な役割を持っているから、教育の環境整備が必要だ」って書いてあるんですよ。あそこは本来、人権保障規定のはずなのに。学習権を保障するために国はきちんと学習機会をつくりなさいとか、お金を出しなさいとか、教育無償化とか――幼児教育・高等教育無償化もそのラインですね。
にもかかわらず、その目的のなかに「国の未来を切り拓く」という、人権保障ではない要素が入り込んでいるんですね。あれは非常に危ないと思っています。

望月 ええ。

前川 要するに、国の役に立つ人間の教育には金を出すけど、国の役に立たない人間の教育には金を出しませんと――たとえば障害者教育は役に立たないからお金は出しませんとかね――そういう考え方に転化してしまう。
すでに、今年の通常国会で成立した大学等就学支援法というものがありますけど、あのなかで大学を選別しているんですよね。社会の要請に応える改革をしている大学に進学するんだったら無償化してあげる、そうじゃない大学に行くんだったら無償化してあげない、と。
この大学の選別にあたっては、文部科学大臣がOKかそうじゃないかの確認することになっていて、確認した大学のことを「確認大学」と呼びます。確認作業はほぼ終わっていて、「97%は確認された」と言っています。だけど、3%は確認されない大学が残っているんです。
実務家教員の授業が1割以上ないといけないとか、役員のなかに産業界の人が二人以上いなければいけないとか――社会の要請と言っていますが、これは要するに「財界の期待に応えるような人材を養成するんだったらお金を出してあげる」というものです。
本来、個人の学習権保障のはずなのに、結局は、国のGDP引き上げとか国力を充実させるとか、そういう目的に適う人間には金を出すという発想が紛れ込んできている。改憲4項目の26条第3項のなかにそういう要素が含まれているんですよ。
わたしが思うのは、まずはこの4項目――そしてそのあとに2012年に自民党がつくった改憲案というひどいものがありますけど、

青池 ええ。

前川 ほとんど人権の意識なんてないような――そういう憲法の文言を書き換えてしまう改憲と、もうひとつは憲法の文言はそのままに、憲法の中身を掘り崩していってしまう、壊す憲法――憲法を破壊するって意味の「壊憲」ね――この憲法を破壊するほうの壊憲はすでにどんどん進行してしまっていると思うんです。
たとえば武器輸出三原則もなし崩し的になくしてしまうとか、あるいは非核三原則だって危ないですよね。「持ち込ませない」なんていうのもどこまで守っているのかという話ですし。
あるいは安倍政権のもとでおこなわれてきた一連の、特定秘密保護法だとか共謀罪法だとか、集団的自衛権を認める戦争法だとか。こうしたものは憲法の文言はそのままにしているけれど、憲法の中身をもう壊してしまっている。こういうことがすでにおこっていますからね。
わたしは憲法の文字面を変える「改憲」はまだそう簡単には起こらないと思うけれど、憲法の実質を壊してしまう壊す方の「壊憲」はこれからもすすんでいくだろうと思います。
だから、いまの教育に関していえば、国の役に立つ人間には金を出すという思想は改憲4項目のなかに入っているんですけど、改憲がおこなわれなくても事実上の政策としてすすんでしまっているわけです。いまの高等教育無償化のなかにそういう要素が入ってしまっているから。
だからわたしは安倍政権がこのままつづいていくと、改めるほうの「改憲」はまだ先かもしれないけれど、壊す方の「壊憲」はどんどんすすんでいくんじゃないかと、そんなふうに思っています。

 

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