前川 だからそうしたなかで全体の奉仕者性をきちんと保とうとすると、一人ひとりの公務員が自分のなかにはっきりとした座標軸を持っていることが大事なのですが、その座標軸になるものはやっぱり「憲法」だと思うんですよね。
もちろん、憲法15条の「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」というところをきちんと持っていることが大事ですが、わたしが、わたしの後輩たちに言ってきたのは、「わたしたちは公務員である前に一個人である。一人の人権を持った、尊厳を持った個人である。その意識を忘れないでほしい」ということ。
それともう一つは、「公務員である前に国民の一人である。あるいは地方で言えば住民の一人である」ということ。
国政というのは、地方自治も含めて、国民の信託によるものであるから、わたしたちも政治や行政を信託している側の主権者であり、自治の主体である国民・住民であるという意識を常に持っていることが大事だと思うんです。
「一個人」であるということ、そして「一国民・一住民」であるという意識を常に持っていることで、いま自分自身がやっている仕事、自分の組織が行っている仕事が、個人の尊厳を侵害するようなことではないか、人権を否定するようなことではないか、表現の自由を否定するようなことをやっているんじゃないだろうかというアラームが、自分の心のなかで鳴ります。
あるいは、「一国民・一住民」であるという意識を持っていれば、いま自分は信託に背くようなことをやっているんじゃないだろうか、全体のためにならないことをやっているんじゃないだろうかと、そういうアラームが心のなかで鳴ります。
だから、自分の心のなかにそういう座標軸を持っていることは、とても大事なことだと思います。わたしが、わたしの後輩たちに言っていたことは、「決して魂を売るな」と。あるいは「貸すのはしょうがない」と、
望月 (笑)
前川 でも、「貸したものは返してもらえ」と、そう言ってきたんですよ。
青池 はい、ありがとうございます。それこそガンジーの言葉ですね。
望月 そうですね。自分を変えないために必要なことですね。
青池 本日はお忙しいなかを、本当にありがとうございました。
望月 はい、ありがとうございました。
前川 ありがとうございました。