望月衣塑子 × 前川喜平 特別対談(5/7ページ)

青池 そういったなかで、わたしたちを構成している公務員のなかでも、憲法尊重擁護義務がある公務員が、本来の社会全体の奉仕者ではなくて、一部の権力の奉仕者になっているような空気を感じています。
わたしたちが署名の取り組みを呼びかけても、行政の中立性なんかを装って、「署名できない」という人がいたりします。また、「声を上げたいんだけれど、上司には逆らえない」といった空気が非常に広がっているなと感じます。
そういったなかで、公務員は憲法をどのように守るべきか、また、いま改憲の策動が加速しているなかで、公務員はどのような行動をとっていけばいいかをお尋ねしたいと思います。

望月 なかなか直接的に組織内で歯向かっていくと――まさにいま内閣人事局があらゆる官僚の人事を握っているなかで、あっという間に左遷されてしまったりとか――いろいろあると思うんですけど、映画(映画「新聞記者」)に出てから何人かの地方公務員を名乗る方たちから連絡をもらうことがありました。
「名前を出して告発はできないけれど、自分のなかであの映画を見て、松坂桃李さんと同じように葛藤したことがたくさんあった」と。

前川 うん。

望月 「組織に忠誠を誓わなきゃいけないとはなっているけれど、やっぱりおかしいものはおかしいんだ」ということで、内部告発的なものをちょこちょこともらうようになってきたんですね。
やっぱり、組織のなかで生きていかなければいけないけれど、それと自分自身の持つ正義とか良心と照らしたときに、おかしいものはおかしいと声をあげないといけないという危機感を持っている人も、公務員のなかでもじつは結構多いんじゃないかと思うんです。
今回の、あいちトリエンナーレや泉佐野市への後付けで政府がおこなったペナルティの問題とか、これまでの文書主義からすると絶対やり得ない行動を官僚が取っている。普通に考えるとおかしいことなんだけど、断った瞬間に飛ばされるから、上が言ってきたことに従わざるを得ないみたいな――そのなかで苦しんでいる人が、おそらく相当数、今回の文化庁の件でもいるだろうなと想像できます。
そういうときに直接的に声を上げられなくても、メディアに内部告発として流すとか、野党の議員側に流すとか、知り合いの区議や市議に流すとか、いろんな形で内部にある危機を伝えられるんじゃないかなと、私自身が関係者の方と話すなかで思います。
やっぱり、表立って声を上げられなくても、いろんな手段があることを知ってほしいし、そしていまの状況のなかで、映画で松坂桃李さんが演じたように、上層部にいる官僚やその部下も同じような思いを抱いている方がたくさんいるんだということを忘れないでもらいたいと思います。前川さんのあの衝撃的な会見によって、

前川 (笑)

望月 多くの公務員が、いまの政権の異様な異常さに気づくことができたんです。たとえ事件にならなくても、森友も加計もあきらかにおかしいということは、全国民わかっていることだと思うんです。
だからそうしたことを積み重ねていくことで、政治・社会を変えていくしかないのかなと思いますので、表立って声を上げられなくてもいろんな手段があることをぜひ知ってもらいたいですね。

 

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一般職公務員が「安定装置」の役割を果たせなくなっている

 

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