特別鼎談「災害に強い自治体をつくるために」(5/9ページ)

菊池 今、各自治体で人員が不足していることと関連した話で、先ほど千葉の事例としてクリーンセンターの職員の話をお聞きしましたが、今、全国的にごみ収集をはじめ、そうした実地の業務を自治体職員が行うのではなく、民間業者に業務委託する自治体が多くなっています。
しかし、そうした民間委託を行っている自治体では、こうした災害時に溜まったごみの処理をどうしようとなったときに、自分たちの自治体の職員では対応できなくなってしまうんですね。そうなったときには委託先の業者に処理をお願いするか、場合によっては他市から応援に来てくれた清掃職員にお願いするしかないということになります。しかし――これは熊本地震などの災害支援に行った職員から聞いた話なのですが――行った先の自治体では清掃業務が全面的に民間委託されていて、そのためその自治体の職員のなかに現場で指示を出せる人がまったくいなくて、はるばる応援に行ったはいいけれど、行った先で何をしたらいいのかわからない状態だった――という話を聞きました。やはりそうしたときに現場で業務をリードできる能力というのは、自治体職員としてある程度必要なことだと思います。
杉岡さんが千葉に行かれたときに見た清掃職員は、自治体の職員だったかわかりますか?

杉岡 職員がやっていたと思いますが……ぱっと見ではわからないですね。ただ、そこの現場は自治体の職員がやっていたと思いました。通常のごみ収集がどうかはわかりませんが。

菊池 そういった災害の現場で、日常的に実地の業務を担っている現業職員の必要性を非常に感じますね。避難所でいえば炊き出しを担わなければならないとかもあるでしょうし。
避難所というのは、小中学校が避難所になることが多いのでしょうか。

杉岡 そうですね。使える大きい施設となるとそうなります。
島田市では基本的に避難所は住民主体で動きます。だから役所の職員はあくまで連絡役というかたちで行くのですが、実際には住民からの「どうなってる?」「どうしたらいい?」という問い合わせがすごく多いので、こちら(危機管理課)が考えている避難所の職員の仕事以上のことをやっているのだなと思います。
そのため、こちらも机上で「これこれをやればいいよ」じゃなくて、実際にそういう状況があるならば、人がいないなかでもなんとか増員するとか、交代体制をもっと取れるようにするとか、突発的なトラブルに対して追加で人員を送るとか、対策の構築が必要になります。ただそれも一時的なもので、「じゃあ一週間長引いたときにどうするのか」と言われたらまったくないんですよね。
それでも、そうなったときにどうしようと考えるよりも、あらかじめ体制を決めておけば、「じゃあそのときは自分が応援要員で行くんだな」と、その人の覚悟もできるし、「こういう体制だから仕方がないな」という本人の納得になると思うんです。「緊急事態だからとにかく行け」と職員を押さえつけちゃうとやっぱり無理が出ますし、わざわざ役所のなかで職員同士がギクシャクするものを極力つくりたくないので、「異常時の緊急事態なんだよ」「みんなで頑張っていかなくちゃいけないんだよ」というのを共有したいんですね。
ただ、そうやって共有するには、無理な体制をつくらないことが必要です。そのためには、僕らも被災地に行って、「水害のときはこういう問題が起こる」というのを直に見たり、そうした経験を踏まえて「じゃあ自分たちの自治体ではこうしよう」ということをつくりあげていくことが必要だと思います。せっかく災害支援に行って被災地の実態がわかったんだから、それを自分たちの自治体の改善に役立てないと意味がないというか、ただ被災地に行って「大変だけどみんな頑張っていこう」だけじゃなくて、そっちが本命なのかなと個人的には思いますね。

菊池 実際、避難所を運営するにあたっても、避難所を担当する職員も、その人自体が被災者ということもあり得ますしね。

杉岡 先ほど村山さんが話されたように、たとえば被災地区に住んでいた職員の家が潰れてしまって、でもその人が現場に行く担当で、じゃあ自分のことを放っておいて現場に行くのかって言ったら、僕だったら行かないですよ。やっぱり自分の家族がそこにいて、ひょっとしたら土砂やがれきに埋まってしまっているかもしれないなかで、すぐに業務に行けって無理な話なので。

菊池 それはそうでしょうね。

杉岡 たまたま今回島田市は目立った被害がなかったので、割り当ての職員全員で担当できましたが、仮にものすごい土砂崩れが誘発されていようものなら、当然割り当てどおりにはいかないので、そのときの体制をどうしようかということも考えていかなければいけない。また、限られた人員のなかで、たとえばいつのタイミングで伊東市に応援要請をするかという決めごともまったくないので、そうしたところまで考えていかなければいけない。
今、実際に他市ではそうしたことが起こっているので、「島田市はまだ起きていないからまだいいじゃん」「起きたときに考えればいいじゃん、なんとかなるでしょ」なんて思っていたら駄目だと思います。それだけいざというときに物事がすすむのが遅くなってしまうので。事前に考えられることをやっておくか、当日になってそこでやるかといったら、当日はいろいろなことが起きているなかで決心しなければならないので、そのあたりは用意周到すぎるくらいにやっておいたほうがいいと思います。

村山 それこそ現場サイドだと次から次に「やれることはないか、やれることはないか」って言われて、外部からは「一刻も早く解消しろ、一刻も早く解消しろ」って言われますね。

一同 (苦笑)

 

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復旧復興には財政の問題もある

 

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