全国に先駆けて浜松市ですすめられている水道コンセッション(民営化)導入を止めようと、1月13日(日)、「1・13命の水を守る全国のつどい・浜松」が浜松市福祉交流センターで開催され、全国各地から約600人が参加しました。
「つどい」に先立ちおこなわれたデモ行進では、約200人が「止めよう水道民営化」「命の水は市民の財産」などうったえながら繁華街を練り歩きました。
基調報告ではつどい実行委員会の池谷豊事務局長が、浜松市で2011年頃から検討がはじまった上下水道のコンセッション方式導入が、昨年の水道法改悪を機に加速していると報告。「民営化されれば、安全よりも利益追求が優先されるだけでなく、水道工事なども運営会社の関連会社に発注され、地元業者ははじかれてしまう。事業を監視する市職員も大幅に減員され現場管理能力が失われていき、災害時対応すらできなくなる。また、コンセッション導入可能性調査業務報告書の作成過程の議事録を公開請求したところ、市幹部から担当職員に『コンセッション方式が最善の選択』と記載するよう指示されていたことがわかり、結論ありきの報告書が作成されていた実態が明らかになった」と述べました。
パネルディスカッションには、弁護士の尾林芳匡氏、アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子共同代表、水ジャーナリストの橋本淳司氏の3人が登壇し、水道事業は民間企業に委ねるべきではないとの立場から発言がされました。
尾林氏は、運営企業が水道事業の継続を盾に料金値上げを迫ったとき、自治体・議会は値上げを受け入れざるを得ず、企業の利益に都合のいいように牛耳られてしまうのではないかと警鐘を鳴らすとともに、公衆衛生は国の責任であり、その国が責任を放棄するような水道法改悪は問題だとうったえました。
内田共同代表は、この間IMF主導で開発途上国を中心に水道民営化がすすめられた結果、料金高騰、水質汚染などを招き、欧米などでも怒った市民の抵抗で再公営化が広がっていると報告。「日本政府は世界の失敗から何も学ばず、周回遅れで民営化をすすめている」と批判しました。また、再公営化したパリ市では、流域全体の環境保全や有機農業、生物多様性も含んだ水道計画をつくり、その意思決定に市民が参加できる仕組みがつくられた事例を紹介し、「再公営化をするだけでなく民主的な新たな住民自治の模索が必要だ」と問題提起しました。
橋本氏は、コンセッション方式導入の理由として老朽化した水道施設の更新がすすんでいないことが挙げられていることに対し、「自治体ではなく、国の予算配分の問題だ。戦闘機を買う金があるなら、水道管に使ってほしい」と発言。また、水道法改悪の国会採択を前に、福井県や新潟県議会で慎重審議や廃案を求める意見書が可決され、自民党議員も賛成したことにも触れながら、「水は自治の基本。単純な水の消費者になってはいけない。水や自治をどう維持していくのか考えることが大切だ」と述べました。
つづいて全国各地からの報告やアピールがおこなわれました。「浜松市の水道民営化を考える市民ネットワーク」事務局の池谷たか子さんは、「浜松市はコンセッション方式を『民営化』ではなく『運営委託方式』だと言いつのっているが、民営化以外の何ものでもない。鈴木康友市長は当初コンセッション方式導入の是非を2018年度中に判断するとしていたが、市民の理解がすすんでいないとして判断の延期を表明した。しかしそれは4月におこなわれる市長選挙の争点外しのためのものだ」と批判しました。
つどいの最後には、参加者全員で浜松市長・市議会議長へ宛てた水道民営化計画の中止を求める集会アピールを採択。わたしたち一人ひとりの行動をつなげ、日本各地で起こっている水道民営化の流れを止めるとともに、水への権利と自治を強め、安心して暮らせる社会をつくることを目指そうと誓いあいました。