静岡自治労連では、憲法を地方行政にいかし、改憲反対の共同を広げるため、今年も「憲法キャラバン」に取り組んでいます。
今年のテーマは、①安倍9条改憲がすすめられるなか、憲法にもとづいて住民の権利を擁護していく自治体職員の役割について、②人口減少に対する地域振興のあり方、その一方で増加する外国人労働者への行政の対応、国のリニア中央新幹線導入による3大都市圏一体化施策の2つです。
5月16日(水)には伊東市を訪問し、小野達也市長と懇談しました。静岡自治労連からは林委員長、菊池副委員長、青池書記長の3人と、単組役員が参加しました。
はじめに林委員長から、第1のテーマである改憲問題について、「安倍内閣は9条に自衛隊の存在を付け加えるとするが、後法優位の原則があるため、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認をうたった1項と2項が死文化してしまう」と、安倍9条改憲の問題点を指摘。また、「憲法上、公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない。行政は、政治とは一定距離を置いて、住民の立場に立つのがルールだ」「加計問題にかかわる柳瀬元首相秘書官の国会答弁は75%の国民が信用できないと言っている。これは行政のルールを曲げたことが原因だ」「服務の宣誓のなかで『日本国憲法を尊重し擁護する義務がある』とうたわれていることが、わたしたち公務員組合の倫理規範になっているため、憲法を守りいかす運動をしていかなければならないと思っている」と、季刊「自治と分権」第64号(2016年7月)に掲載された専修大学の晴山一穂教授の寄稿を示しながらうったえました。
これに対し小野市長は、「改憲発議されたとしても市は公平中立でなければならない。議論の材料として、メリット・デメリットといった解説をすることはあると思う」「全体の奉仕者の点については、政策をもって、その方向に向かって仕事をするのは当たり前だ。行政は法令遵守ですすめていく必要がある」と回答。また、「周辺諸国の状況から改憲問題が出てきたと思うが、現在北朝鮮も平和の方向に動いているように思う」と述べました。
次に2つ目のテーマである人口社会減と外国人増への対応について、林委員長は、静岡県が昨年12月にまとめた「本県9年ぶり転入超過」という調査結果と、総務省が今年1月に公表した「本県転出超過5242人」という調査結果を比べながら、「転出超過という総務省の調査は外国人を含めていない。転入超過という県の調査は外国人を含んでいる。静岡県は外国人が多く転入しており、特に技能実習生が増加している」と指摘し、行政としての問題意識と対策を尋ねました。
また、月刊「住民と自治」2015年1月号に掲載された奈良女子大学の中山徹教授の論文を示しながら、「国土交通省は『国土のグランドデザイン2050』構想のなかで、リニア中央新幹線で三大都市圏を1時間以内で結び、圧倒的国際競争力をもつ『スーパー・メガリージョン』を形成させるとしている。一方、その他の地方は、生活拠点に人口や施設を集め、30万人規模の都市圏にする『コンパクト+ネットワーク』を形成させるという。これでは首都圏一極集中が加速され、地方がますます疲弊してしまう。地域の資源を活用し、既存の集落をどう持続可能にしていくかを考えるべきだ」と問題提起しました。
小野市長は、外国人労働者については「伊東市ではこれまでも宿泊産業で積極的に受け入れてきた。最近は通訳を必要とするなど伊東市の特色としてサービス業で増えている」と回答。また、少子化の課題では「出生数は自分のころの3分の1になっている。どう改善させればいいか、一朝一夕にはいかず苦慮している」と述べました。