第153号の記事
- ミニ報告記事「11・18ひまわり集会」
- 新春座談会「災害支援ボランティアで見えてきたもの」
- いのちの水が儲けの道具に
- 19春闘 課題と展望
- 会計年度任用職員制度と自治体業務の包括委託
- 流れ星★
- ナイスな人
原発再稼働させない仕組みづくりを
11・18ひまわり集会に1000人参加
11月18日、「浜岡原発の再稼働を許さない!11・18ひまわり集会」が開催され、県内外から1000人が参加しました。
茨城県東海村の村上達也元村長が、東海第二原発の再稼働に立地自治体だけでなく周辺自治体の事前了解を必要とする「新安全協定」について報告したほか、静岡でも周辺自治体や住民の声が届く仕組みをつくろうと確認しあいました。
住民のいのちとくらし守るために
災害支援ボランティアで見えてきたもの
わたしたちは自然災害にどう向き合うべき?災害支援ボランティアに参加された皆さんに聞きました。
突如町を襲った自然災害
2018年はあいつぐ地震や台風、集中的な豪雨や豪雪など、多くの自然災害が各地に深刻な被害をもたらしました。
7月の西日本豪雨は「平成最悪の水害」とも言われ、非常に広い範囲で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、200人を超える死者や、い まだ安否のわからない行方不明者、数万棟に及ぶ住家被害など、きわめて甚大な災害となりました。
被災自治体では、半年経ったいまも職員が被災者支援と復旧活動に奮闘しています。
全国の仲間が支援に駆けつける
こうしたなか、自治労連の仲間が全国各地からボランティアとして被災地に駆けつけ、被災者や被災自治体で働く仲間を励ましてきました。
静岡自治労連も昨年8月から10月にかけて、各単組からボランティアを募り、広島県安芸郡坂町に支援に入りました。
人員削減が復興の妨げに
いっぽうで、この間国が押しすすめてきた公務員の大幅削減と非正規化、民営化が、自治体の災害対策や被災地の迅速な復旧・復興の妨げになっていることが指摘されています。
正規の地方公務員は22年連続で54万人が削減され、64万人の非正規職員への置き換えと、公務公共サービスの民間委託がおこなわれてきました。
とりわけ現業職場では、退職不補充や民間委託がすすみ、自治体の現業労働者がこれまで担ってきた災害時における迅速で柔軟な対応が困難になるなど、自然災害に対する自治体の対応力の弱体化が問題となっています。
災害に強い自治体をめざして
わたしたち自治体・公務公共労働者は、頻発する自然災害に対してどう向き合うべきでしょうか。また、災害に強い自治体をめざすうえで、取り組むべき課題は何でしょうか。
西日本豪雨災害支援ボランティアに参加された皆さんに、被災地の実態や、活動を通じて見えてきた課題、ボランティアに対する思いなど、それぞれ語ってもらいました。
「自分にも何かできることはないかって」
倉本 航弥 さん(島田市労連/技手・建設課)
――ボランティアに参加したきっかけは何ですか?
テレビで被災地の状況が報道されているのを見て、自分にも何かできることがないかと考えていたときに、組合のボランティアの案内があったので、いいきっかけと思い、参加しました。
――実際に行ってみてどうでしたか?
微々たる力だったかもしれないけど、行ってみてよかったです。
実際に行ってみないと被災地の状況もわからないし、今後、自分が災害に遭ったときのために気をつけておくべきことにもつながると思います。
「家屋に入り込んだ泥をなんどもなんども運び出した」
武内 亨弥 さん(浜松医療センター労組/保育士・あゆみ保育園)
――ボランティアではどんな作業をしましたか?
家屋に入り込んだ泥をかき出す作業をしました。泥はもう固まっていてスコップも入りにくいし、水分を含んでものすごく重い。臭いもきつく、マスクをしていても貫通してくる。それを袋に詰めて何回も何回も運び出しました。
――ほかのボランティア参加者はどんな様子でした?
僕が2日目に行ったときは、広島の大学生がボランティアのリーダーをやっていたのですが、彼が周囲の仲間に対して、明るく、上手にやる気を起こさせるような声掛けや指示をしていて、それでみんなが「被災地の人のためになるんだったら頑張らなくちゃ」と思い、励まされました。
「災害時に自分が動けるための準備って必要だと思う」
鈴木 秀紀 さん(島田市労連/事務職・建築住宅課)
――被災地を実際に見てどう感じましたか?
大きな道路とか、交通がある程度改善されると、復旧してきたイメージになって、段々報道も少なくなるけど、僕らが支援に行った地域ではまだまだ家も凄い状況で、住民も戻れていない。それなのに静岡に帰ってくると報道自体がもうやってなくて、被災地の実態が全然伝わっていないなと感じました。
――防災の必要性についてどう思いますか?
自分自身の防災対策はやっぱりしておかないと。防災袋もそうだし、タンスが倒れないようにとか、耐震とか。いざ災害が起きたときに、自分や周囲がぐちゃぐちゃの状態では人助けになんて行けない。災害時でも自分が動ける状態に持っていくための準備って、公務員じゃなくても日頃からやっておく必要があると思います。
「自分が参加することに意義があるんだって知ってほしい」
西澤 恒 さん(浜松医療センター労組/保育士・あゆみ保育園)
――自治体・公務公共労働者として、災害時には市民や、入院患者、子どもらを守らなければいけない場面が起こり得ます。日頃から意識することはありますか?
自分は保育士なので、月に1回、職場で避難訓練をしています。でも、地震が来たという想定のもと、すぐに屋外に出るだけの訓練なので、不十分さも感じています。災害時に子どもたちを守るためには、姿勢を低くして隠れるとか、きちんと防災頭巾を被せるとか、日頃からもっと多くのことに気をつけて訓練する必要があると思います。
――ボランティアに抵抗を感じている人、またはこれからボランティアに参加される人に伝えたいことはありますか?
ボランティアに抵抗がある人って、「どうせ自分が行ってもたいした力になれないから」って考えちゃう人が多いと思うんですよ。でもボランティアって、自分だけの力じゃなくて、周りの仲間一人ひとりの力が集まってこそできることなので、自分が参加することに意義があるんだっていうことを、みんなに知ってほしいと思います。
「災害現場では現業職員の力が必要ですね」
梶井 康弘 さん(浜松市職/現業・南清掃事業所)
――ボランティアを通じて見えてきた課題はありますか?
がれきや土砂などの災害ゴミの処理が問題だと思うよ。災害時、もの凄い量のゴミが出るなかで、集積場所を確保して、運搬して、処理・焼却するためには多くの清掃職員が必要だし、災害現場では、作業の要領や段取りがわかっている現業職員が主に立ってやらないと対応できないよね。
被災地に行って感じたけど、自治体の職員が少なかった。もっと自治体間のつながりを強くして、各自治体から被災地に応援に入る体制をつくるべきだと思うよ。
――静岡で大規模災害が発生したときには何が課題だと思いますか?
静岡で怖いのは浜岡原発だよね。活断層の真上に建っているし。もしあれが爆発したら、御前崎市も周辺の地域も、人が住めなくなっちゃ
う。いまだって停止はしているけど、燃料を冷やしつづけないと爆発するんだよね。止まっていても危ないよね。
「防災担当課に頼りきりでは被災の現場はまわらない」
福島 陽生 さん(島田市労連/技師・建設課)
――被災者の様子はどのように見えましたか?
東日本大震災で東北にボランティアに行ったときも含めて、ボランティアセンターに作業を依頼している人は、復興へ前向きになれている人が多いのかなと感じました。逆に依頼することができない人ほど、気持ちが落ちちゃっている印象を受けました。そうした人たちにどう手を差し伸べていくのかが課題ですね。
――災害時における自治体の体制はどうあるべきだと思いますか?
何かあれば防災担当課や災害対策本部頼りになりがちですが、広島の実態を見て、それでは現場はまわらないと感じました。各担当が自分の役割を理解したうえでの事前準備と、臨機応変な対応が求められると思います。
――非常時の各課の連携や、イレギュラーな案件にも対応できる体制づくりが必要なんですね
「別の自治体が手を差し出すことがとても重要」
杉岡 一宏 さん(島田市労連/事務職・危機管理課)
――被災地は復旧・復興している?
僕はいまでも福島でお手伝いさせていただいてますが、被災された方で変われない人もいるんですよ。国が「復旧だ、復興だ」なんて言っている一方で、心が置いてけぼりにされている人がたくさんいます。ただ、そうした人たちのことをメディアは報道しないので、被災地に行ってみないとそれがわからない。歯がゆいですね。
――災害時にいまの人員で大丈夫?
平常時の仕事もぎりぎりの人員配置で頑張っているなか、それとは別に災害の対応なんて、その自治体だけじゃ絶対無理ですね。梶井さんが言っていたように、別の自治体が手を差し出すことが、とても重要だと思います。
――災害時にはボランティアに頼るしかないんでしょうか?
頼らざるを得ないこともありますが、災害時にボランティアを待っているだけの行政では駄目だと思いますね。ボランティアが集まるところは早く復興して、集まらないところは復興しないというのは問題がある。それなら、行政もただ受け身でボランティアを待つのではなくて、自分からメディアの前に立つくらいじゃないといけないと思います。
「災害に強い自治体づくりに向けて」
伊藤 清実 さん(島田市労連/事務職・課税課/「しずおかの仲間」編集委員)
皆さんのお話を聞いて、メディアでは報道されない被災地の状況や、ボランティアに参加する意義、災害に強い自治体づくりのため
に求められる人員体制や日頃からの防災対策、現業職員の重要性、自治体間の連携など、さまざまな課題が少しずつ見えてきました。
住民のいのちとくらしを守る役割をはたせる地方自治体をめざして、これからも運動をすすめていきましょう。
この記事は2018年11月26日におこなった座談会より、一部抜粋・編集したものです。座談会の全文はこちら
いのちの水が儲けの道具に
「水道の民営化に反対」と市民とともに立ち上がった浜松市職の仲間たち
浜松市は上水道事業の運営権を民間企業に設定するコンセッション方式の導入の検討をしています。「命を支える水を儲けの対象にしないで。安全でおいしい浜松の水道事業は公営のままで」の市民の声を受け、1月13日(日)に浜松市で全国集会が開催されます。
水道事業を儲けの対象に
昨年12月、国は水道事業を民間事業者に開放するための水道法改正を行いました。法改正では第一条にある「計画的整備」から「基盤強化」に変更。これは、経営改善、経費削減のことです。「清浄で豊富低廉な水の供給」「公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与」を旨とする法の目的と矛盾するものです。また、「広域連携」「官民連携」の推進を導入。「広域連携」では自己水源があるのに遠隔地の水源を利用させられ料金値上げにつながります。「官民連携」は、今回のコンセッション方式を担保するもの。PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の2011年改正で公務員の退職派遣、公的資金での事業支援が可能になっています。
民営化先進国では急速に再公営化の流れ
世界では1980年代に、水道事業の民間委託化が進みました。ところがパリ市では85年の委託から25年間で料金が3・5倍になり2010年に再公営化されました。南アフリカでは、高騰した料金が払えない貧困層が川の水を飲み、コレラで300人が死亡する事態にも。現在、32カ国、267カ所で再公営化がされています。水道普及率がほぼ100%の日本は水メジャーにとっておいしい市場です。世界で破綻があいついだ水事業の民営化。日本政府はなぜ周回遅れで導入しようとしているのでしょう。浜松市はなぜ参入しようとしているのでしょう。
1・13集会に参加して命の水を守りましょう
浜松市長は昨年11月24日の記者会見で、18年度中に導入の結論を出すことを見送ると表明。12月6日の法改正直後、地元の浜松上下水道協同組合の理事長も新聞取材で「組合の総意としてコンセッション方式には反対」「先人たちが築き上げてきた安心安全な水道を売り渡してたまるか」と述べました。浜松市職員労働組合連合会では、この間、反対署名に取り組んできました。上下水道職員の退職出向の可能性もあり、組合との交渉も求めています。1月13日には「命の水を守る全国のつどい・浜松」が浜松市福祉交流センターで開催されます。明日は皆さんの町の水道が狙われます。集会へ参加し、水を金儲けの対象にさせないようにしましょう。
19春闘 課題と展望
全体の奉仕者として憲法を生かして住民生活を守ろう
あけましておめでとうございます。昨年7月に執行委員長となり、早くも半年が過ぎました。自治体労働者としての権利とさらなる改善に取り組みます。
地方自治のあり方を変質させる「構想」が
昨年7月に第二次報告が取りまとめられた「自治体戦略2040構想」は、高齢化がピークを迎える2040年頃の自治体のあり方を検討したものです。人口減少へ向かうなかで、職員を半数にするため人工知能(AI)を活用することや、市町の枠を超えた広圏域行政や官民協働のより一層の推進などが打ち出されています。
この構想は、自治体の役割を大きく変質させていく考え方です。地方自治をどうつくり、守っていくか、自治体首長との懇談をしていく必要があると思います。
「包括委託」問題と水道民営化許すな
静岡県内でも、さまざまな問題が生じています。
その一つは、「会計年度任用職員制度」の導入です。2020年4月から臨時・非常勤職員が新制度へ転換となります。これを機に派生した島田市の「包括委託」問題は、臨時・非常勤職員の将来的な雇用・労働条件に問題が発生する恐れがあります。
二つ目に、浜松市で先行する水道事業の「コンセッション方式」(民営化の一種)問題です。民間事業者に「命の水」を差し出させる訳にはいきません。浜松市で導入を許せば、他自治体へ波及するのは必至です。
民間・地域労組と連携した19春闘へ
さて、19国民春闘をたたかうにあたり、静岡自治労連は次の3点を基本的な構えとして臨みます。
① 民間・地域労組と連携した19国民春闘をたたかうため、総学習・総対話を重点にした取り組みをすすめます。
② 「憲法をいかして住民生活を守る」特別な任務を推進し、生計費を基準としたすべての労働者の賃金底上げ、「社会的な賃金闘争」(最低賃金・公契約・公務員賃金)、「こういう静岡と職場をつくりたい」運動をすすめます。
③ 2万人静岡自治労連をめざし、組織拡大強化をすべての要求活動と結びつけて取り組みをすすめます。
職場にとどまらず地域に足を踏み出そう
私たちは、憲法を尊重し擁護することを「宣誓」しました。憲法第15条に明記される「(国民や地域社会)全体の奉仕者」である自治体労働者として、「憲法をいかして住民生活を守る」ことを頭に描きながら各々の業務にあたります。
2020年東京オリンピック・パラリンピック後には、経済の冷え込みが予想され、労働者の賃金に跳ね返ってくる可能性があります。それまでに賃金の足腰をいかに強くしていくか、19国民春闘はこのことを念頭におく必要があります。職場にとどまらず、地域にも一歩足を踏み出して、たたかいをすすめていきましょう。
臨時・非常勤職員の働き方が変わる
会計年度任用職員制度と自治体業務の包括委託
2020年4月1日から臨時・非常勤の働き方が変わる会計年度任用職員制度については、各自治体で勤務条件の説明や労使協議がすすめられています。一方、臨時・非常勤を民間業者へ移行する包括委託(注)の動きも出ています。
臨時・非常勤から不安の声
「良い制度になると思っていたのに、会計年度毎の任用では毎年不安」、「正規の勤務時間より1分でも短ければパートタイムなんて納得いかない」
会計年度任用職員の勤務条件については、来年度議会での条例化に向け、各自治体で労使協議が行われ、各単組では説明会や学習会が開催されています。参加した臨時・非常勤職員からは不安の声が上がっています。
雇い止め、格差拡大の恐れ
不安の要因になっているひとつは、会計年度毎に、職場の一方的な都合で雇い止めが正当化されること。二つ目は、勤務が1分でも短ければパートタイムとなり、フルタイムにはある退職手当や諸手当が支給されず格差が拡大する恐れがあること。三つ目に、会計年度任用職員のすべてに人事評価制度が適用され、もの言えぬ職員づくりがすすむことなどです。
また、任用されても定数に含まれないため正規から会計年度任用職員への置き換えがさらにすすむ恐れがあります。正規職員も含め職場の実態にあった人員配置を求めて取り組んでいく必要があります。
包括委託、島田市10月から
一方、臨時・非常勤の働き方のもうひとつの選択肢として、自治体業務の包括委託(注)が浮上しています。県内では島田市が10月から順次実施していくとしています。
島田市は、財政確保の困難を理由にあげ、「嘱託員・臨時職員をこれまでと同じように任用することができない」としています。しかし、臨時・非常勤の雇用不安や労働条件低下が危惧され、職場では偽装請負(注2)や、それを防ぐ必要から非効率な業務運営が懸念されています。
注 包括委託→複数の業務をまとめて民間業者へ委託すること。
注2 偽装請負→本来請負は、自治体職員(発注者) と業務を行う者(受託者)の間に指揮命令関係が無いため、職員が直接指示すると偽装となる。