10月21日(土)、「第21回静岡地方自治研究集会」が静岡市内で開催されました。自治体公務公共関係労働者など、全体会・分科会をあわせて、のべ94人の組合員・県民が参加し、国政や県下の地方自治の課題について学習と討論を深めあいました。
はじめに主催者を代表して、静岡大学の川瀬憲子教授(集会実行委員会実行委員長・静岡県地方自治研究所理事長)があいさつ。参加者に有意義な学習と交流を呼びかけました。
つづいて、奈良女子大学の中山徹教授を講師に「日本型コンパクトシティ・地域の再編で暮らし・自治体はどう変わる?」と題した記念講演がおこなわれました。
中山教授は、いま政府がすすめている国土と地域の再編は「人口減少・少子高齢化のもとで、日本の大手企業が国際競争に勝ち残り、儲けを確保するためもの。人口減少をテコにして、グローバル社会・新自由主義経済のもとでの国土ビジョンを提示し、首都圏への投資の集中と国際競争力の確保が目的だ」と説明。こうした国土形成計画のもとで、政府はリニア中央新幹線で東京-名古屋-大阪を結ぶスーパー・メガリージョンを形成し、三大都市圏の一体化で人口の一極集中をさらに推し進めようとしていると話しました。そして、いま地方都市ですすめられている「日本型コンパクトシティ」とは、首都圏一極集中の結果、崩壊の危機に瀕した地方に対し、コンパクトシティ、連携中枢都市、定住自立圏、小さな拠点、地域運営組織など、いくつかの概念と新たな制度を国が提案しているものだと話しました。
中山教授は、この「日本型コンパクトシティ」について、「自治体は、①開発型自治体、②歳出削減自治体のいずれかを選択することになるが、いずれも上手くいかないだろう」と断言。そのうえで、「いま求められているのは『市民共同自治体』だ。人口減少の一番の基となっている格差解消や市民参加を探求していく必要がある」と強調。地域経済低迷の最大の要因である格差の解消のために自治体は可能な施策を展開すべきだと話し、そのためには、食料、再エネ、観光などで新たな雇用の創生や、東京一極集中と国際競争力は関係なく政策転換を図るべきだとうったえ。「コミュニティ単位で市民組織と行政の共同をすすめるべきだ」と、生活圏の整備と行政の地域化の重要性を話しました。
つづいて、静岡自治労連の青池則男書記長(静岡県地方自治研究所事務局長)が基調報告をおこないました。青池書記長は、憲法と地方自治、沖縄基地問題、核兵器廃絶、人口減少と地域経済、雇用と賃金、社会保障と医療・福祉、リニア中央新幹線とスーパー・メガリージョン構想、静岡空港と空港新駅、浜岡原発再稼働と清水天然ガス発電所、教育問題、東富士演習場問題など、国政・県政の諸課題や情勢の特徴を簡潔に報告。これからの自治研活動を共同の力で前進させることを呼びかけました。
午後からは5分科会・1講座に分かれて討論を深めあいました。参加者は、「医療と介護」「格差と貧困」「商工経済・地域再生」「浜岡原発・避難計画の検証」「リニア新幹線」など、テーマごとに学習と討論を深め、各地の実践を持ち寄りました。
講座「自治体労働者のための自治研入門」では、元静岡県職の照井健氏を助言者に、「住民のためにいい仕事がしたい」という自治体労働者の願いの実践のため、自治研活動をどのようにすすめていくかを討論。「地域の課題とは」「課題の発見には組合員みずから調査に出向くことが必要」「どの地域でも公共交通機関の不足が深刻」「調査に出かけることで職員の意識にも影響がある」など、活発な意見があいつぎました。