「静岡空港・住民投票の会」の運動のまとめと今後の空港建設中止の運動の方向

2002年1月27日
静岡空港・建設中止の会

はじめに

9月12日に県議会は、高まる県民の声を無視して私たちが請求した住民投票条例を否決しました。県は住民投票の代わりと位置づけてタウンミーティングと専門家委員会を実施しましたが、これは住民投票の替わりになりえないことは明らかです。しかし「住民投票の会」については、静岡空港に賛成の方も反対の方も「大事なことはみんなで決めよう」と運動してきたわけですから、ここで一定の区切りをつける必要があります。

1 盛り上がった住民投票署名運動

3月7日にスタートした住民投票署名は尻上がりに盛り上がりを見せ、県民の中に大きな広がりを見せました。
運動は3万人の受任者、30万人の署名(有権者の1割)を目標にとりくまれ、吉田町で28.36%、伊東市で20.39%、岡部町で19.67%、大仁町で19.61%と目標を大きく上回る市町村も生まれ、全県で292,484人、9.76%の署名を集めることができました。
署名をとる上で私たちがめざしたのは、空港をはじめとする大型プロジェクトの推進により県財政が傾き、県民サービスがカットされている状況の中で、空港を生活の問題として訴えたということです。それは単に県のサービスカットにとどまらず、市町村補助金がカットされることによって市町村サービスのカットにまで及んでいます。たとえば富士宮市では、県の市に対する補助金がカットされる中で、病院の休日救急夜間外来窓口の補助金や、乳ガン、子宮ガン検診の補助金がカットされていることを市民に訴え、大きく署名をのばしました。
また街頭での受任者申し込みや、メール、ファックスでの申し込みが殺到したことです。署名は砂にしみこむ水のように、県民の間に広がりました。
こうした県民の中での広がりがあったからこそ、知事は記者会見の中で「重大に受けとめる」といわざるをえなかったし、条例案に賛成せざるをえなかったと考えます。

2 静岡空港・住民投票の運動の今日的意義

静岡空港・住民投票の運動は、マスコミに数多く取り上げられ、全国から注目されました。
実現していれば、第一に都道府県レベルの住民投票では全国で2番目、公共事業の可否を問うものでは初めてで、「構造改革」を旗印に掲げる小泉内閣成立後の、公共事業の行方を占うものになりました。第2には、有権者300万人の、これまでの住民投票で最大規模となり、90年代後半から盛んになった住民投票が、制度としてどうなっていくのかを問う意義を持つものでした。
昨年4月から分権一括法といわれる、地方分権を進める法律がスタートしました。この分権改革については問題点もたくさんあるのですが、いいところのひとつは、自分の地域についての条例制定権がつよまったことです。今回の運動は明らかにその流れの中にあり、全国に影響を及ぼす普遍性があるものと考えます。
今回の県議会の議論の中で、自民党は、「もし住民投票を実施したら全国に広がってしまう」ということをしきりにいいました。広がってしまうと困るという論調です。自民党推薦の参考人として呼んだ成田教授も「他県に波及する可能性は大きく、先例となるだろう」とし、原発、安保も左右する問題として危惧されるということを表明していました。
空港推進かどうかに関わりなく、この影響を拡げたくないという力が働いたことは確かです。私たちは、「大事なことはみんなで決める」ということが、全国に広がった方がいいと考えるわけですが、それだけ影響力のあるとりくみだったと言えます。

3 住民投票署名は、空港建設にどんなインパクトを与えたか

(1) なぜ石川知事が住民投票に賛意を表明したのか

「住民投票立法フォーラム」のHP、「住民投票のあゆみ」によると、直接請求による住民投票を数えると、空港署名は全国115番目で、そのうち、条例が可決されたのは9カ所にすぎません。可決したところも、市長や町長が反対したけれども議会がチェック機能を働かせたところがほとんどです。
静岡県においては、知事が賛意を表明したという意味で、全国的にもたいへん珍しいところといえます。なぜ石川知事は賛意を表明したのでしょうか。
一つには、多くの署名が追いつめたといえます。11月23日にスタート集会を実施して以来、短期間のうちに全県で準備をし、すべての市町村で会をつくりました。それが署名期間中燃えに燃えて29万をこす署名を集めたのです。この多くの署名が知事を動かしました。
二つ目には、これは否決後の記者会見で言明しているのでが、「争点はずし的戦略的な判断だ」といっています。「選挙はフィーバーするので冷静に判断をしてもらえない。だから選挙と離れて直接投票にすれば理解はえられる」と考えたとのべています。
三つ目は、住民投票を実施しないと空港建設に関する事態を打開できないということです。
静岡空港は、着工されて3年目を迎え、今年3月末までに約960億円を建設のために支出しています。事業の進捗としては、道路、農地などの付帯事業(事業費執行率は半分以上)はかなり進んでいるが、本体工事は県発表の数字でも16%にすぎません。
これは、4軒の土地を売らない地権者の方々がおり、彼らが所有する土地が、空港主体部分(滑走路等)の主要部分に存在していることに大きくよっています。このままでは工事自体がとまり、空港建設自体が頓挫する状況が生まれています。この状態を打開するには、土地収用法しかなく、3月の署名が始まる前に知事は、「土地収容手続が長期の手続を要することをふまえながら、ギリギリのところで判断したい」と発言しています。それにはクリアしなければならない問題が多くあったと考えられます。
知事は、住民投票で勝つことで、この地主と県民の支持の関係を断ち切り、空港建設を一気に進めたいと考えたと推察されます。

(2) 条例案を可決できなかったのはなぜか

その理由のひとつは、不人気の森内閣にかわって「聖域なき構造改革」をうたった小泉内閣が誕生し、それにともなって自民党に対する追い風がおこりました。6月の都議選で自民党が勝利したのをみて、県議会自民党は知事選が勝ちそうだと判断しました。
二つ目には全国への影響について、かなりのプレッシャーがあったと考えます。あるマスコミ関係者の話では、「自民党本部からかなりの圧力あった」といわれています。
三つ目は「今やれば負ける」という判断が働いたことです。世論調査を見れば、空港建設には世論調査で過半数に達するほど反対が多く、「知事は何を考えているんだ」と語る自民党県議もいました。
こうしたことの結果で、9月12日に条例案は否決されました。
しかし単純に、あっさりそれができたわけではありません。県民注視のもとで、49年ぶりに連合審査会を設置し、時間をかけて審議されました。びわこ空港の議会審議は約一月間だったのに対して、静岡空港は6月22日から9月12日の3ヶ月にわたるものとなりました。
「県議会にとってはよかった。こういうことがないと県会は活性化しない(自民県議)」、「今まで県会はシャンシャンで、県民不在だった。今は県民が大きく注目している(県議会事務局職員)」と語っているように、その評価とは別に時間と熱意をかけざるをえないものでした。6月県議会での継続審査で決めたのは、7月8日日曜日、夜の11時半でした。
しかし滋賀県でおきた「びわこ空港住民投票条例運動の記録」の運動のまとめで、「直接請求運動は、全国的にも否決されてから変化を引き起こしています(17ページ)」と書かれています。
確かにびわこ空港の運動は、12万人の署名を集めながらも県議会で否決されています。びわこ空港も昨年秋に知事が凍結発言をし、今年になってから「聖域なき構造改革」を掲げる小泉内閣が誕生し、終焉を迎えたといっても過言ではありません。徳島市の吉野川河口堰の是非を問う住民投票条例請求も、一度議会で条例請求が否決された後の市議選で、住民投票賛成の議員が多数当選し、議員発議で住民投票が行われ、市民のNOの意思表示を国に突きつけました。

(3) 否決された結果何が変わったか

空港推進勢力の側についていえば、状況は何も変わっていません。依然用地取得の問題で大きな困難を抱えていますし、条例案の否決で地権者の態度はますます硬化しています。住民投票制定署名が盛り上がったことで、世論との結びつきを確認していますし、県が住民投票をやらなかったわけですから、これは県にとっても推進する自信のない事業だと見なすことができます。用地買収ができない以上、空港の開港はできないわけですから、何も変わっていないどころかかえって事態は後退しているのです。
それに較べて私たちの方は、県民が空港建設に対して大きな注目を集めたということが最大の成果だと考えます。世論調査をみても昨年10月の朝日新聞の世論調査では、賛成42%、反対46%に対して、今年7月の中日新聞調査では賛成34%、反対54%と変化しています。
地権者は世論との結びつきに意を強くするという結果をもたらし、県の勝手なやり方に県民の監視の目ができたということも大きな財産です。

(4) 現状のとらえ方

もし今の状況で空港建設を推進しようと県が考えるなら、強制収用しか考えられません。土地収用法の第2条は「公共の利益となる事業に必要な土地」は、「収用し、使用することができる」としています。またその事業認定の要件を「公益上の必要があるもの」ともしています。
第3条の事業の列挙の中に「航空法による飛行場」がありますが、これには第16条の事業の認定が必要となります。そのためには第20条の「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があること」が要件とされています。これは第1条にさかのぼって「公共の利益となる」ということを県ははっきり示さなければなりません。公共の利益になるとは、みんながどれくらい利用するのか、どのぐらい必要なのか、県民がどのぐらい支持するのかということが重要になると考えます。
住民投票を取り組んだことにより、一直線に空港開港へ進むことを県民は容認しないし、結果的に空港建設を推進するのを妨げる力となります。
しかし今後、このまま運動がなければ世論はしぼんでしまいます。推進を阻むためには今回の運動の教訓をくみ尽くして新たな運動を取り組んでいく必要があります。
もうひとつは、今まで地元を中心に進めてきた空港のとりくみを、全県に拡げたということです。とりわけこれまで関心の薄かった東部の人たちが主体的に運動に参加しました。それは、県財政問題を通じて生活の問題であり、空港問題はみんなに関係ある問題と訴えてきた結果です。

4 専門家委員会、タウンミーティングの問題点

また住民投票の代替として行われていると県がしている専門家委員会については、住民投票の代わりにならないと考えます。それを県民に伝えていく必要もあります。
住民投票は、情報公開の中でこれを行うことによって、県民みんなが議論をし、投票に参加することによって、その結果に責任を持つということです。しかし専門家委員会は、ある意味では「代議的なもの」であり県民が直接参加できるものではありません。タウンミーティングがその代わりだといわれても、意見を言える人の数は限られており、意見を言えたからといって、それがどのように反映されるかも明確ではありません。
また専門家委員会における運営上の問題点もあります。ひとつは、委員の恣意的な選定が行われているのではということです。これまで県の審議会にかかわる人が選定されており、木村委員長も2月に開かれた空港フォーラムで空港推進論を語っている人であり、空港の問題点を検証する専門家委員会の委員長にはふさわしくありません。また県民の最大の関心事の一つである県財政問題について検討する地方財政の専門家が入っていないというのは、だれが見てもおかしいことだと考えます。
また11月中に専門家委員会を終わらせるというスケジュールで、議事が進められている点も疑問です。そのため急ピッチで議事を進めなければならず、県民が疑念を抱いている需要予測と県財政を同じ日程でこなすという、普通では考えられないものです。第2回の時に需要予測を終わらせ次の議題に進もうとした委員長に「県民の関心事を45分で終わるのですか」と意見が委員から出るほどです。また時間がないために一つの検討項目を県が説明すると、その分野の専門家はコメントするだけで、その後の質疑は他の委員、いわゆる非専門家(その分野の専門家でないとういう意味)が行います。これでは10年かけて構築した県の空港に対する論点を一から検証するのは、どだい無理というものです。

5 今後の運動について 空港中止を求める会に改組し発展させる

一方署名をがんばっていただいた方々の中には、「がんばったけれどもだめだった」という失望感が一部にあります、否決という結果から一面的消極的評価におちいらないようにすることが重要です。最大の成果は、県民の目を県政と空港建設に集めたことです。これは今後、県が空港建設を推進するにあたって、大きな足かせとなるものです。県民の中につくりだした変化を、成果として確信にする必要があります。
具体的な行動として、専門家委員会が終わり、知事が結論を出すのに対応して、県民向けにビラを、引き続き県下に配布します。
その中で「大事なことをみんなで決めよう」と訴えた住民投票の会を、専門家委員会の終了と工事のゴーサインとともに一定終結させ、新たな情勢の発展に即したかたちで運動をくんでいく必要があります。
県は、県民からこれだけ疑問がわいている静岡空港建設の是非を県民に判断させてほしいと私たちが請求したことについて、結果的にそれを拒否しました。したがって静岡空港は、県民合意が取れていない事業と考えざるをえません。それはまた県民多数の合意を得る自信のないことを、県が自ら認めたことです。私たちは、住民投票運動の到達点にたって、静岡空港建設の中止を求める運動に発展させていきます。
静岡空港の問題点は、住民投票の運動を通じてもますます明らかになり、空港建設中止を求める声は、日ごとに強くなっています。先に述べたこの運動の到達点からも、この声を維持、強化していくためには、今後全県のとりくみとしてねばり強く持続させていくことが重要です。
私たちは、市町村の会、県の会を改組し、空港中止に向けた会をつくっていきます。まず最初の運動目標を、強制収用させない県民の世論づくりに置き、そして広く世論を喚起し、静岡空港建設の中止をめざします。

6 「『合意のない静岡空港』は中止を」の運動を広げよう

「合意のない静岡空港」は中止させることを目標とします。静岡空港の問題点を指摘すると同時に、この間、住民投票条例を直接請求した運動の組織・財産を可能な限りくみつくし発展させられるような運動を展開します。そのためにも「静岡空港には県民合意がない」ことを県民の共通意識としてつくりあげ、幅広い運動の基礎としていく工夫が必要です。
これらに必要な次の活動を当面行います。

(1) 2002年度予算の組みかえを要求をするとともに「市町村への県補助金削るな」の運動をしていきます

県当局は12月、来年度予算を組むに当たって800億円足りないと記者会見しました。これは一昨年度の1100億円に次ぐ数字ですが、中小企業の緊急貸付の制度が変わったことを勘案すると、これまでにない数字となります。さらに景気の悪化による県税収入の悪化が、予想されます。しかも前回の時点では基金がまだ底をついておらず、なんとか切り抜けることができましたが、もう後がないところまで来ています。これから小泉改革の目玉である地方交付税削減がよりいっそう実施されれば、ますます県財政は、たいへんな状態になります。
このまま平成14年度予算が編成されれば、県民サービスや市町村補助金の削減は必至です。また「借金のための借金」、財政健全化債を使用せざるをえません。この状況を調査し、県の新年度予算発表にあわせて、予算の組みかえ・空港の予算を削って、県民生活を守る予算に組みかえるよう要求します。
2月から3月の定例市町村議会に向け、各市町村への県からの補助金削減の項目を調査し、その実態を広く県民のみなさんに宣伝します。そしてその復活に向け市町村長に申し入れます。できるだけ広範な人たちと共同し、県に対して補助金削減の声を集中します。
その際学習を重視して、県の会で県財政の学習会を実施するとともに、各市町村の会でも実施していきます。

(2) 「空港よりも○○の実現を」、「この金で何ができるか」の運動を進めます

県民が広く参加する運動として、「空港よりも○○の実現を」、の要求ハガキや要求カードを県、県議会に集中します。県民サービスや市町村補助金がカットされる中、県民要求実現と結びつけた運動を展開します。30人学級実現、中小企業支援、雇用対策、乳幼児医療無料化、環境保護など、県民の広範な声を集めることをめざし、住民投票署名をしてもらった30万人を目標とします。
そのときに「この金で何ができるか」という、静岡空港の建設費(1年あたり、総工費、利子も含めて)でこういうサービスができるという具体的な指標を広く示します。

(3) 空港建設の是非を問う私たちの手による住民投票を準備します

今年の春以降に、県民が広く参加できる活動として、静岡空港の是非を問う私たちの手よる住民投票を実施するため準備を進めます。県民世論が、静岡空港に対して反対が多いことを県知事に示す機会をつくります。

(4) 来年の県議選をステップにして、住民投票を実施する県政の実現をめざします

中止を要求する会として、住民投票を県に対して要求する運動をしていきます。
来年4月の県議選を一つの節目として、県議会の中に住民投票賛成の議員の多数派が構成できるよう、必要な運動を行っていきます。

(5) 現在の県の状況や、これまで、そしてこれからの活動を広く県民に知らせていきます

これまでの運動の到達点を広く知らせていきます。今までの運動に自信を持ち、状況を切り開くためにも、まだまだ広報が足りません。ビラ、街頭宣伝、HPなど、あらゆる手段をつくして宣伝します。
これまでの運動の到達点や県の需要予測の矛盾、厳しい県財政の現状をパンフレットにしていきます。

(6) 静岡空港を中止させるまですべての中止を望む人たちと協力してとりくみます

県という組織を動かすためには、広範な共同は欠かせません。静岡空港の中止を望むすべての人たちと共同を広げていきます。

 

▲ このページの先頭にもどる

© 2017 静岡自治労連(静岡自治体労働組合総連合)