望月衣塑子 × 前川喜平 特別対談

このページは2019年9月28日におこなった、望月衣塑子さんと前川喜平さんの対談の全文を掲載したものです。

参加者
望月 衣塑子(東京新聞社会部記者)
前川 喜平(元・文部科学事務次官)

インタビュアー
青池 則男(静岡自治労連書記長)

 

安倍首相は第200回臨時国会の所信表明演説で、あらためて与野党に改憲議論を呼びかけるなど、改憲に向けて執念を燃やしています。
いっぽう、わたしたち公務・公共関係労働者は、この間、中央集権化と職場の管理統制による締め付けで、「物言えぬ公務員」づくりがすすめられています。
政権による改憲の策動が加速するもとで、「憲法尊重擁護義務」を持ち、「全体の奉仕者」であるわたしたち公務・公共関係労働者は、いま何をすべきでしょうか。
東京新聞の望月衣塑子記者と元文科事務次官の前川喜平氏に聞きました。

前川 喜平
(まえかわ きへい)

1955年生まれ。東京大学法学部卒業。元・文部科学事務次官。
2017年5月、加計学園問題をめぐって、「あったものをなかったことにはできない」と、官邸の関与を示した文書の存在を証言。また、国家戦略特区選定の経緯について、「公平、公正であるべき行政の在り方がゆがめられた」とうったえた。
退官後は自主夜間中学校の講師として活動。映画「新聞記者」にも本人役で出演。
座右の銘は「面従腹背」。

望月 衣塑子
(もちづき いそこ)

1975年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。東京新聞社会部記者。
森友・加計学園問題をはじめ、武器輸出の拡大や軍事研究費の増加、辺野古基地建設など、取材を通じて政権の闇に深く切り込む。特に菅義偉内閣官房長官の会見で果敢に質問する姿は、「マスコミの最近のありように一石を投じるもの」として高く評価されている。
著書「新聞記者」がシム・ウンギョンと松坂桃李の主演で映画化され、大きな反響を呼んだ。

 

青池 わたしたち自治労連は地方自治体の職員で構成する労働組合なのですが、お二人に憲法問題について意見をお聞きして、みんなにメッセージとして伝えていきたいと思い、この場をセッティングさせていただきました。
はじめに、いま改憲がすすめられようとしているなかで、住民運動も色々とすすめられています。わたしたち自治労連も3000万人署名をはじめ署名に取り組んでいます。
いま安倍首相がすすめようとしている9条を中心とした改憲で、日本をどういう方向に持っていこうとしているのか、お二人の考えを聞かせていただきたいと思います。まず、望月さんからお願いします。

望月 世論もまだ拮抗しているなかで、改憲支持者たちと話しても、「死刑制度と同様に国民の8割くらいに理解がない。憲法9条に手を入れるというのは現実的に難しい」と言います。ただ、日本会議を含め安倍さんのバックにいる人たちが「なぜ安倍か」といえば、憲法9条をあれほど変えようという情熱のある人はいないという、絶大なる支持、期待感を持っているからです。
今回の組閣でも、日本会議の強い意向を受けて動いていると言われた衛藤さんという内閣府の――

前川 中心人物ですよね。

望月 中心人物を出している。萩生田さんが出てきたり、あと細田さんが憲法改正推進本部長でしたっけ。これまで裏方で動いていた人を表に出して、在庫一掃という人もいるけれど、これぞ安倍カラーみたいな色を出しています。
この間も、今回の参院選で改憲の賛同を得られたみたいなことを安倍さんが発言していて、いったいどこで賛同を得たんだろうって思うんですけど。

前川 (笑)

望月 とにかく今回の人事を含めて、改憲をやる気なんだというポーズを見せつづけることによって自分の支持層にうったえることを、政治家としてのポジショントークを含めてやっている。やりつづけないとあの人はいる価値がなくなってしまうというか、そこに対する期待感みたいなものを常に意識しているのだと思います。
しかし、それと世論の空気とは大分乖離がある。現実的に言うと、消費増税して色々な還元をするんだと菅さんは言っているけど、現実的にはかなり実質賃金が落ちているから、経済的にも国内の不満要素がもっともっと高まっていくと思うんですよね。

青池 ええ。

 

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